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最高裁判所第三小法廷 昭和42年(さ)4号 判決 1967年6月20日

主文

原略式命令を破棄する。

右略式命令請求事件の公訴を棄却する。

理由

本件非常上告趣意について。

原略式命令は、被告人の生年月日を昭和二二年八月一一日と記載しており、記録に編綴されている身上調査照会書によつても、右記載にあやまりのないことが認められる。そうすると、被告人に対して本件公訴の提起された昭和四一年一〇月二一日当時には、被告人は少年であつて、公訴を提起するためには、家庭裁判所の送致決定を経ることを要したところ、右送致決定のなされた事実は認められない。しからば、右略式命令の請求を受けた秋田簡易裁判所は、刑訴法四六三条により通常の手続により審判をしたうえ、公訴提起の手続が法令に違反したものとして、同法三三八条四号により判決をもつて公訴を棄却すべきものであつたといわなければならない。しかも、本件は罰金のみにあたる罪であるから、被告人が少年である限り、たとえ家庭裁判所が事件の送致を受けても、刑事処分を相当と認めてこれを検察官に送致することは法律上許されない場合であつたと認められる。しかるに、前記簡易裁判所は、被告人に対し、道路交通法一二〇条一項、四五条一項六号等を適用して、罰金三、〇〇〇円(その不完納の場合には金二五〇円を一日に換算)に処し、その仮納付を命ずる旨の略式命令を発しているのであつて、右略式命令は、法令に違反し、かつ、被告人のため不利益であるときにあたるというべきである。

よつて、刑訴法四五八条一号但書により、原略式命令を破棄し、被告人に対する前記公訴を棄却すべきものとし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。(下村三郎 柏原語六 田中二郎 松本正雄)

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