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最高裁判所第三小法廷 昭和42年(オ)427号 判決 1967年12月19日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人吉田鉄次郎の上告理由について。

仮登記仮処分命令に不服のある者は、本案につき訴えを提起し、その仮登記の基本たる権利の有無について判断を受けたうえ、該命令の取消を求めるべきであり(大正一三年(ク)第一一四号同年四月四日大審院決定、民集三巻一二七頁)、仮登記原因の疎明の充足の有無のごときは、仮登記仮処分命令の効力に消長をきたすものではない。のみならず、本件において、上告人が甲第一号証の公正証書の作成嘱託手続に違法があるというのは、相手方たる債権者の代理人が本人として出頭したことのみを理由とするものであつて、債務者たる上告人は自ら出頭し、右事情を知悉して公正証書の作成を嘱託したことは、原判決の確定するところであるから、裁判所がこれを疎明資料の一として所論仮登記仮処分命令を発したことに、なんら違法の廉はないというべきである。

原判決に所論の違法はなく、論旨はすべて採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 飯村義美 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄)

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