最高裁判所第三小法廷 昭和42年(行ツ)82号 判決 1971年3月23日
上告人 山田勝郎
被上告人 長瀬長三郎
被上告人参加人 愛知県知事
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人鈴木正路の上告理由について。
原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)が本件土地およびその近傍の土地の本件売渡処分当時の状況についてした認定は、挙示の証拠に照らし是認することができ、右の当時、本件土地が自作農の創設に適しない土地であることが明白であつたと認めるべき証拠はないとする判断もまた、本件証拠関係に照らし首肯することができる。
ところで、農地法八〇条は、自作農創設特別措置法三条による買収農地については、当該農地自体につき自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が生じたときには旧所有者らに対する売払いを義務づけているものと解すべきである(最高裁判所昭和四二年(行ツ)第五二号、同四六年一月二〇日大法廷判決、裁判所時報五六二号一頁参照)が、同条により旧所有者らに売り払われなければならないのは右のような場合に限られるのであり、また、このような場合にあたるかどうかについては、所論売渡保留指定の有無は、直接なんら関係がないというべきである。
前記原判決の認定に徴すれば、本件土地については、売渡処分当時右のような場合にあたることが明白であつたとは認められないというべきであるから、本件売渡処分は無効ということはできない。したがつて、その無効を前提とする予備的請求を棄却すべきものとした原判決の判断は正当である。
所論は、ひつきよう、売渡保留に関する法令の規定および農地法八〇条の解釈について独自の見解を主張し、また、原判示にそわない事実を前提として、原判決の違法をいうものにすぎず、原判決には所論は認められない。所論は理由がなく、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判官 田中二郎 下村三郎 松本正雄 飯村義美 関根小郷)
上告理由<省略>