最高裁判所第三小法廷 昭和43年(オ)435号 判決 1968年12月17日
上告人 ○○石油株式会社
亡大和正吉訴訟承継人
被上告人 大和マツ(仮名) 外二名
被上告人等三名相続財産管理人 坂田信子(仮名)
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人山本敏雄の上告理由第一点について。
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠によつて是認するに十分である。そして、原判決が、上告人主張の融通手形の人的抗弁および大和正吉が実質的無権利者である旨の抗弁はその認定事実に照らして採用しがたいものとしてこれを排斥した趣旨であることは、その判文に徴して明らかである。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第二点について。
所論は、本件各手形がいずれも上告人から訴外浜中晃こと浜中秀晃に対して融通手形として交付されたことを前提とするものであるが、かかる事実関係は原審において上告人の主張しないところであるから、論旨は上告適法の理由と認めることができず、採用することができない。
同第三点について。
上告人の主張にかかる融通手形の抗弁は、本件各手形が上告人から大和正吉に対して融通手形として振り出されたことを内容とするものであることは、本件記録に徴して明らかであるから、原審が所論の内容の釈明をしなかつたからといつて、原審の措置にはなんらの違法もない。論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)