最高裁判所第三小法廷 昭和43年(オ)650号 判決 1968年12月24日
上告人
柳沼作已
被上告人
大沢嘉平治
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について。
民法四一八条による過失相殺は、債務者の主張がなくても、裁判所が職権ですることができるが、債権者に過失があつた事実は、債務者において立証責任を負うものと解すべきである。しかるに、本件にあつては、債務者である上告人の債務不履行に関し債権者である被上告人に過失があつた事実については、上告人においてなんらの立証をもしていないことは、本件記録に徴し明らかである。されば、原審が本件について民法四一八条を適用しなかつたのは当然であつて、原判決には所論の違法はない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条にしたがい、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。(飯村義美 田中二郎 下村三郎 松本正雄)