最高裁判所第三小法廷 昭和43年(オ)884号 判決 1968年12月17日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由一について。
原判決認定の事実関係のもとにおいては、被上告人の工場が現に放散する騒音等は、上告人の居住する地域社会における通常人の生活や職業を妨害する程度に達しないものであり、また、右騒音等が将来右の程度をこえるおそれがあることを認めるに足りる証拠がない旨の認定は、原判決挙示の証拠関係および原審(第一審を含む。)の取り調べた証拠に照らして首肯することができ、右認定の過程にも所論の違法はない。論旨は採用できない
同二について。
本件地域に対する騒音基準が愛知県告示第四四二号(原判決に第四一一二号とあるは誤記と認める。)の施行により従前の五五ホンから六五ホンにひきあげられたことは同告示により明らかであるが、これは該地域の環境の変化によるものと推察され、したがつて、このような環境の変化があつた以上、従来同地域につき五五ホンをもつて一般に受忍すべき範囲であるとの判断が右環境の変化後は同地域につき六五ホンをもつて一般に受忍すべき範囲であるとの判断に変更されたとしても、判例抵触となるものではない。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)