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最高裁判所第三小法廷 昭和45年(あ)2373号 決定 1974年7月16日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人雪入益見、同田原俊雄の上告趣意第一点ないし第三点のうち、憲法二八条違反をいう点は、原判決は、公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為についても労働組合法一条二項の適用があるとの見解にたったうえで、被告人らの本件所為はその時期、場所、方法、態様、影響等の具体的事実関係にかんがみて違法たるを免れない旨判示しているのであるから、原判決の所論憲法解釈の当否が原判決の結論に影響するものでないことはその判示自体において明らかである。所論は、適法な上告理由にあたらない。

同第一点ないし第三点のうち、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第四点は、いずれも本件とは事案を異にして不適切な判例を引用する判例違反の主張であり、同第五点は、単なる法令違反の主張であり、同第六点は、事実誤認の主張であって、すべて適法な上告理由とはならない。

なお、原判決が第一審の認定を維持した本件事実関係の大要は、被告人は、国鉄動力車労働組合組合員約一五〇名と共謀し、昭和三八年一二月一三日午後八時ころ、日本国有鉄道尾久駅構内において、多数乗客を乗せて入構した上野駅発黒磯駅行五二五旅客列車の前方二、三メートルの軌条上に、共にスクラムを組み数列の縦隊となってうずくまるなどしたうえ、更に、被告人らによる下車要求を拒否して右列車に乗務したままの機関士及び機関助士に対し、その腕を抱えるなどして強いて下車させ、これによって右列車の発進を同日午後八時四四分ころまで不能ならしめたというものであるから、ここにいたっては、右列車阻止の目的が原認定のとおりであり、右列車の乗務員が前記動力車労働組合所属の組合員であることを考慮しても、被告人らの本件所為は、法秩序全体の見地(昭和四三年(あ)第八三七号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻三号四一八頁参照)からとうてい許容しがたい不法な威力の行使による業務の妨害であるというべく、これにつき威力業務妨害罪の成立を認めた第一、二審判決の結論は、相当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 高辻正己)

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