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最高裁判所第三小法廷 昭和47年(オ)1279号 判決 1974年11月29日

上告人

吉沢丈夫

上告人

吉沢さち子

右両名訴訟代理人

坂根徳博

被上告人

大東京火災海上保険株式会社

右代表者

秋田金一

右訴訟代理人

日野和昌

外二名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人坂根徳博の上告理由について。

金銭債権を有する者は、債務者の資力がその債権を弁済するについて十分でないときにかぎり、民法四二三条一項本文により、債務者の有する権利を行使することができるのであるが(当裁判所昭和三九年(オ)第七四〇号、同四〇年一〇月一二日判決、民集一九巻七号一七七七頁)、交通事故による損害賠償債権も金銭債権にほかならないから、債権者がその債権を保全するため民法四二三条一項本文により債務者の有する自動車対人賠償責任保険の保険金請求権を行使するには、債務者の資力が債権を弁済するについて十分でないときであることを要すると解すべきである。

これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによると、債務者である控訴人斉藤信之は上告人らの損害賠償債権を弁済するのに十分な資力を有するというのであるから、上告人らが右債権を保全するため、民法四二三条一項本文により、斉藤の有する保険金請求権を行使することは、できないといわなければならない。

それゆえ、右と同旨の原判決は、その余の判断をまつまでもなく、正当であることが明らかであつて、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(坂本吉勝 関根小郷 天野武一 江里口清雄 高辻正己)

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