最高裁判所第三小法廷 昭和48年(し)62号 決定 1974年3月13日
主文
本件各抗告を棄却する。
理由
本件各抗告の趣意は、別紙第一のとおりである。
まず、職権をもって調査すると、原裁判所は、昭和四六年九月申立人らを被疑者とする本件付審判請求事件を受理したのち、別紙第二記載のような審理方式(以下従前の審理方式という。)を定めたところ、申立人らの弁護人から、従前の審理方式の違法を主張して、同裁判所を構成する裁判官三名に対し忌避の申立がされ、その特別抗告事件において、従前の審理方式の適否に触れる判断が示された(最高裁昭和四七年(し)第五〇号同年一一月一六日第一小法廷決定・裁判集刑事一八五号四九九頁)ため、原裁判所は、右決定及び同種事案についてされた最高裁昭和四七年(し)第五一号同年一一月一六日第二小法廷決定・刑集二六巻九号五一五頁の趣旨等を検討した結果、従前の審理方式の一部を別紙第三の一のように修正する(以下修正後の審理方式を本件審理方式という。)とともに、別紙第三の二記載のように証人河本勉及び同岡村富造を取り調べる旨の決定をし、昭和四八年六月一日申立人らの弁護人らに告知したところ、申立人らの弁護人らから本件審理方式及び証拠調の決定に対し、原裁判所に異議の申立がされ、原裁判所が右異議の申立を棄却したため、本件各抗告に及んだものであることが認められる。
ところで、本件各抗告の対象の一部である審理方式の点について考えてみるに、審理方式なるものは、裁判所が当該事件について審理に関する方針を宣明するものにすぎず、これによって直ちに一定の訴訟法上の効果を生ずるものではないのが一般であって、例外的に審理方式中これを関係人に告知することにより一定の訴訟法上の効果を生じさせると認められる部分を除き、審理方式自体に対し不服申立をすることは許されないものと解すべきである。
この見地から本件審理方式をみるに、わずかに請求人及び被疑者の弁護人に捜査記録の閲覧謄写を許す部分が当該関係人に閲覧謄写権を付与する訴訟法上の効果を生ずる決定と解されるほかは、本件付審判請求事件の審理に関する方針を宣明し、関係人の協力を要請したものにすぎず、これによって直ちに一定の訴訟法上の効果を生ずるものではないと認められる。
そうすると、本件審理方式中請求人及び被疑者の弁護人に捜査記録の閲覧謄写を許した決定を除外した部分については、不服申立をすることは許されず、これについての異議申立棄却決定に対する本件各抗告もまた不適法であるといわざるをえない。
つぎに、本件審理方式中請求人及び被疑者の代理人に捜査記録の閲覧謄写を許した決定並びに別紙第三の二の証人河本勉及び同岡村富造を取り調べる旨の決定に対する異議申立を棄却した部分について考えてみるに、これらの決定は、本件においては、訴訟手続に関し判決前にした決定に準ずるものとして、これに対し刑訴法四三三条の抗告が許されない場合に当たるものと解されるから、これらの決定に対する異議申立を棄却した決定に対する本件各抗告もまた不適法である。
結局、本件各抗告はすべて不適法であるから、刑訴法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 高辻正己 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 江里口清雄)