最高裁判所第三小法廷 昭和50年(オ)152号 判決 1975年6月27日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人古賀幸太郎の上告理由第一点について。
質屋営業者の金員貸付行為は、商法五〇二条八号の銀行取引にあたらないと解するのが相当であるから、質屋営業者である被上告人入江佐一の野林辰軒に対する金員貸付を商行為ではないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
同第二点について。
所論は、原判決の商法五〇三条の規定の解釈の誤りをいうものであるところ、本件訴訟の経過及び原判決の説示を勘案すると、原判決は、被上告人新妻義徳の野林辰軒に対する金員貸付が同被上告人の経営する旅館の営業のためにされたものではないことを認めた趣旨に解し得ないわけではない。それゆえ、原審の判決は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 坂本吉勝 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己)