最高裁判所第三小法廷 昭和50年(オ)170号 判決 1975年6月24日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人戸田宗孝、同榎本逸郎の上告理由について。
債務者が代理人として本人の所有不動産を自己の債務の弁済に代え債権者に譲渡した場合において、民法一一〇条にいわゆる第三者としての債権者が債務者に代理権があると信ずべき正当の理由の存否は、債務者がその所有権移転登記手続をした時又は右登記に必要な書類を債権者に交付してその義務の履行を終了した時に存在する諸般の事情を考慮して判断すべきものと解するのが、相当である。それゆえ、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて被上告人往住光訓が訴外小田切猛に上告人を代理して本件土地を譲渡する権限があると信ずるにつき正当の理由があるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決(その引用する第一審判決を含む。)に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 高辻正己)