大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和50年(オ)807号 判決 1976年2月17日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

執行力ある確定判決の正本に基づく強制競売において、債務者所有の不動産が競売され、競落許可決定が確定して競落人が代金を全額支払つた場合には、その前に既に右判決の内容をなす債権が消滅しても、右競落不動産の所有権は競落人に移転し、その後、競売手続開始決定が取り消され、競売の申立てが却下されても、競落人において競落不動産の所有権を取得した効果には、何ら影響を及ぼさないと解するのを相当とする。

これを本件についてみると、原審が適法に確定したところによれば、(一) 被上告人は、上告人に対し金員の支払等を命ずる執行力ある確定判決の正本に基づいて、東京地方裁判所に上告人所有の本件土地について強制競売の申立てをし、同裁判所は、競売手続開始決定をした上、競売手続を進行させたところ、被上告人がこれを競落した、(二) 同裁判所は、昭和四六年四月九日競落許可決定の言渡しをし、右決定は同年七月一六日に確定した、(三) 被上告人は同年一〇月一八日に代金を全額支払つたが、上告人は、それより前の同月一六日に本件執行債権全額を弁済供託し、同月一八日右債務消滅を理由に東京地方裁判所に請求に関する異議の訴えを提起し、同日本件強制執行の停止決定を得た、(四) 右請求に関する異議の訴えについては、上告人勝訴の判決があり、右判決が確定した結果、東京地方裁判所は昭和五〇年一月三一日本件強制競売手続開始決定を取り消し右強制競売の申立てを却下する旨の決定をし、右決定は確定したというのである。右の事実関係の下において被上告人が競落によつて本件土地の所有権を有効に取得したとする原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己 裁判官 服部高顕)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例