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最高裁判所第三小法廷 昭和51年(し)130号 決定 1979年5月01日

主文

原決定を取り消す。

本件を高松高等裁判所に差し戻す。

理由

本件抗告の趣意は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四三三条の抗告理由にあたらない。

しかしながら、職権により調査すると、次の理由により、原決定は取消しを免れない。

記録によれば、高松高等裁判所は申立人からの再審請求事件(同裁判所昭和五一年(お)第一号)につき昭和五一年一〇月二九日再審請求棄却の決定をし、右決定の謄本が同年一一月三日徳島刑務所在監中の申立人に送達され、申立人はこれに対し同月五日異議申立書(標題は「即時抗告」とあるが、高等裁判所がした決定に対しては即時抗告の申立は許されないので、異議の申立をしたものと認める。)を同刑務所長に差し出したところ、同所長はこれを郵送に付し、高松高等裁判所は同月八日これを受け付けたが、原裁判所は、本件異議の申立はその期間経過後である同月八日にされた不適法なものであるとして、異議申立棄却決定をしたことが明らかである。

しかし、刑訴法三六六条の規定は、再審の請求のみならず再審請求棄却決定に対する異議の申立についても準用されるものと解するのが相当である(最高裁昭和五〇年(し)第一号同年三月二〇日第一小法廷決定・裁判集刑事一九五号六三九頁参照)から、本件異議の申立は、同法四二八条三項、四二二条に定める提起期間内にされたものといわなければならない。

そうすると、本件異議の申立を不適法として棄却した原決定は、法令の解釈適用を誤つたものであり、これを取り消さなければ著しく正義に反すると認められる。

よつて、原決定を取り消し、さらに本件異議申立の当否につき審理させるため、本件を原裁判所に差し戻すものとし、刑訴法四一一条一号、四三四条、四二六条二項を適用し、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(環昌一 江里口清雄 高辻正己 横井大三)

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