最高裁判所第三小法廷 昭和51年(行ツ)90号 判決 1977年1月25日
上告人 清水剛
被上告人 若松税務署長
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人元村和安の上告理由について
原審の確定した事実関係のもとにおいては、所論の各点に関する原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない(最高裁昭和四六年(あ)第一九〇一号同四八年三月二〇日第三小法廷判決・刑集二七巻二号一三八頁参照)。論旨は、独自の見解を主張するものにすぎず、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判官 環昌一 天野武一 江里口清雄 高辻正己 服部高顯)
上告代理人元村和安の上告理由
第一点 原判決は国税通則法第七〇条二項四号の解釈適用を誤り、この誤りが判決に影響を及ぼすことは明白である。
すなわち、原判決は、過少申告により所得税を過少にして、その不足額を納付しなかつたことは、国税通則法七〇条二項四号にいう「偽りその他不正の行為により税額を免れた」ことに該当するものと解しているが、右解釈によれば(不申告の場合は「偽りその他不正の行為」に該当しないのに)、過少申告の場合は、所得計算の違算や忘失の場合を除き、すべて「偽りその他不正の行為」に該当することになり、その結果更正処分の除斥期間については、実際上五年を原則とし、所得計算の違算や忘失の場合に限り、例外的に三年とする結果を招来することになり、右結果は、更正処分の除斥期間については三年を原則とし、「偽りその他不正の行為」ある場合に限り、例外的に五年と定めた国税通則法七〇条全体の規定の立法趣旨と、法文の形式に反するものである。単なる不申告行為が(税額を免れる意図のもとになされる場合が多いにもかかわらず)、更正処分の除斥期間について三年とされることを考えれば、上告人の右主張の正当なことは明白である。
第二点 原判決は国税通則法六八条一項の解釈適用を誤り、この誤りが判決に影響を及ぼすことは明白である。
すなわち、原判決の見解によれば、過少申告の場合には、原則として、重加算税が賦課されることになり、過少申告加算税の賦課される場合は殆んど考えられないことになる。右見解は過少申告の場合に過少申告加算税が原則として賦課され、特に悪質な場合に限り重加算税を賦課する旨の加算税全体の立法趣旨と、法文の形式に反するものである。
よつて、原則決は破棄さるべきものである。
以上