大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和52年(オ)714号 判決 1977年10月11日

主文

理由

上告代理人松永和重の上告理由について

原判決(その引用する第一審判決を含む。)の判示するところによれば、原判決は、訴外内浜自動車有限会社(以下「訴外会社」という。)の資本金一〇〇万円のうち三〇万円を出資して訴外会社を設立し、その取締役に就任することになつた被上告人は、いわゆる取締役としての名義を貸すにすぎない者であつた関係上、その訴外会社に対する社員としての出資の払込義務は、上告人が被上告人に代わつてこれを履行し、被上告人にはその現実の履行をさせないことを上告人において被上告人に対し約諾していたから、上告人は、その出捐した被上告人の出資金につき、これを立替金として被上告人に対し返還の請求をすることができない旨認定したものであることが明らかである。これによれば、所論被上告人は現実の出資義務を負わないとの合意をした当事者は、上告人及び被上告人であり、それが判文上不明確であるということはできない。また、所論の合意が上告人と被上告人との間に成立した前記内容の約定である以上、それは、被上告人の訴外会社に対する社員としての出資の払込義務を免除し、あるいは、有限会社法一四条、一五条に定める資本充実義務を免除する約定ではないから、これをもつて社員の資本充実義務の免除を禁止した同法一六条に違反する無効の約定とすることはできない。論旨は、原判決を正解しないか、又は独自の見解に立つて原判決を論難するものにすぎず、いずれも採用することができない。

(裁判長裁判官 服部高顕 裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己 裁判官 環 昌一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例