最高裁判所第三小法廷 昭和52年(行ツ)23号 判決 1977年6月14日
北海道室蘭市港南町二丁目一四番八号
上告人
福士文治
北海道室蘭市新富町一丁目四番一号
被上告人
室蘭税務署長
佐藤克彦
右当事者間の札幌高等裁判所昭和五〇年(行コ)第六号、同第九号所得税更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五一年一〇月一九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解を主張して原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高辻正巳 裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄 裁判官 服部高顯 裁判官 環昌一)
(昭和五二年(行ツ)第二三号 上告人 福土文治)
上告人の上告理由
一、原一、二審判決共執行官の旅費宿泊料の法律上の性格につき理由を付さない。
上告人の求めて居る法律上の償還金(弁済金)が何故課税対象となるのかの理由を故意に避けて居るのは上告人の求めて居る重要な請求原因に対する判決理由を付さないものである。(民事訴訟法第三九五条六項)
二、原判決理由中
○ 予納金が地方裁判所になされてとあるも上告人在職中は予納金は執行官になされて居り裁判所になされるようになつたのは上告人退職後で本理由は間違いである。(民事訴訟法第三九五条六項以下同じ)
○ 又執行官の一年間に収入した手数料が政令で定める額に達しないときは国庫から不足額の支給を受けるとありこの場合の収入に旅費宿泊料が算入されないことを示して居り乍ら本判決理由の旅費が収入となるとの解釈と相違して居る。
○ 次に旅費宿泊料等二、三の例を除き実費の額によるものとされるとあり旅費宿泊料は実費の償還でないように解して居るが執行官の旅費宿泊料は実費償還であり本理由と異る。
○ 理由三、中の採証にあたり公文書である執行官の各統計表(甲号各証)を否認し法廷で尋問したものでない被告代理人等が任意に作成した供述書(川上茂の)を採用して居るのは採証の誤りである。
○ 次に公務員の旅費は必要経費を認められない給与所得として課税対象とすべきでないと理由付けて居るが執行官の旅費は必要経費であり事業所得としても控除されなければならないものである。
四、中税務署員の申告指導に応ぜず自己の意見に固執したとあるのは当時の申告指導の実体を知らざるも甚しく自己の意見を固執し押し付けるのは逆に税務署員である。
○ 七中、延滞納付通知の取消しを求める請求について不服申立がないとあるも主たる更正決定の取消を求めて居る本件に於て附随の延滞税の取消を求めないとするは更正決定が取消となつても延滞税のみは生きとする主客てん倒の解釈である。
○ 八、加算税賦課決定を取消した一審判決を失当とするは明治時代よりの執行官旅費は課税対象にならないとする長い間の慣習法を無視したもので上告人の故意の申告とするのは法令違反である。
三、法曹会決議、大正十一年四月十五日委員会第三科決議(九)第一六一号(法曹会蔵版法曹会決議要録下巻、清水書店発行一三八〇頁)下級裁判所判例、昭和二年、昭和五年に執行官(史、執達史)の旅費は立替金の償還(弁済)で課税対象にならない、
とある。
以上