最高裁判所第三小法廷 昭和52年(行ツ)62号 判決 1981年7月14日
上告人
近畿土地株式会社
右代表者
小森新次郎
右訴訟代理人
酒見哲郎
田中実
被上告人
中京税務署長
島村宗治
右指定代理人
山田雅夫
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人酒見哲郎、同田中実の上告理由第一点及び第三点について
被上告人が本件追加主張を準備手続において提出しなかつたのはその故意又は重大な過失によるものではないとし、また、準備手続終結後の口頭弁論において被上告人に本件追加主張の提出を許しても訴訟を著しく遅滞させることにはならないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及び記録に現われた本件訴訟の経過に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
同第二点及び第三点について
論旨は、要するに、被上告人の本件追加主張は本件更正処分の通知書に附記された更正の理由とは異なる新たな事実を内容とするものであつて、これを本件更正処分の適否に関する攻撃防禦方法としてその取消訴訟である本件訴訟において提出することは許されないものと解すべきところ、被上告人が本件追加主張を提出することは妨げないとした原判決は、当裁判所昭和四三年(行ツ)第六一号同四七年一二月五日第三小法廷判決・民集二六巻一〇号一七九五頁に違背し、法令の解釈適用を誤つたものである、というのである。
そこで検討するに、原審が適法に確定したところによれば、(一) 宅地の分譲販売等を業とする上告人は、本件係争事業年度において本件不動産を七六〇〇万九六〇〇円で取得しこれを七〇〇〇万円で販売したものとして、右事業年度の法人税につき青色申告書による確定申告をした、(二) これに対して、被上告人は、本件不動産の取得価額は六〇〇〇万円であるとして、他の理由とともにこれを更正の理由として更正通知書に附記し、本件更正処分をした、(三) ところが、被上告人は、本訴における本件更正処分の適否に関する新たな攻撃防禦方法として、仮に本件不動産の取得価額が七六〇〇万九六〇〇円であるとしても、その販売価額は九四五〇万円であるから、いずれにしても本件更正処分は適法であるとの趣旨の本件追加主張をした、というのであつて、このような場合に被上告人に本件追加主張の提出を許しても、右更正処分を争うにつき被処分者たる上告人に格別の不利益を与えるものではないから、一般的に青色申告書による申告についてした更正処分の取消訴訟において更正の理由とは異なるいかなる事実も主張することができると解すべきかどうかはともかく、被上告人が本件追加主張を提出することは妨げないとした原審の判断は、結論において正当として是認することができる。そして、右のように解しても、所論引用の判例の趣旨に反するものではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(伊藤正己 環昌一 横井大三 寺田治郎)
上告代理人酒見哲郎、同田中実の上告理由<省略>