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最高裁判所第三小法廷 昭和52年(行ツ)73号 判決 1977年10月11日

大阪府枚方市藤田町三番八

上告人

田中治

枚方市大垣内町二丁目九の九

被上告人

枚方税務署長

岡山亮次

右当事者間の大阪高等裁判所昭和五一年(行コ)第一〇号所得税等決定処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五二年三月一八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を破棄する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 江里口清雄 裁判官 天野武一 裁判官 高辻正己 裁判官 服部高顯 裁判官 環昌一)

(昭和五二年(行ツ)第七三号 上告人 田中治)

上告人の上告理由

一、原判決は、仮に控訴人のいう如くかつらぎ商事に対して抵当債務がなかつたとしても、控訴人のなした本件売買の効果及び右所得の存在を否定することとはならないと判示している。

二、しかしながら、かつらぎ商事に対する抵当債務が不存在であつたとすれば、売買代金一、九三〇万円のうち大野二郎及び太田鎮大の両名において取得した金一、四三〇万円は、本件土地の売買に関する仲介報酬以外の何物でもないこと明らかである。

原判決によれば、本件売買と右金一、四三〇万円の取得とは無関係であるとするが、果してそうであれば、上告人は、右の代金を右両名に無償で贈与したことになる。この結論が非常識で事実に反することは、明らかである。

三、上告人と大野・太田との間の契約関係は、甲第一号証で文章化されているが、実態は上告人とかつらぎ商事の間で抵当債務について紛争があつたところ、杉本忠一の紹介で大野・太田の両名がかつらぎ商事の関係を右両名で解決する条件で、本件土地を上告人の手取り額五〇〇万円で売却するように求められ、上告人はこれを承諾して右甲第一号証の契約書を作成したのである。

四、右契約書(一)によれば、大野二郎が右契約当時、かつらぎ商事よりその抵当権を譲受けた如くであるが、その当時その事実は存在していない。

右契約書は必ずしも事実に副わない点もあること右のとおりであるが、要するに前項に述べた趣旨の約定にもとづいて大野等の求めるままに上告人は、契約書に署名捺印した。

五、右契約は、金五〇〇万円以上のいくらの金額で売却してもそれは大野らの任意であり、上告人に金五〇〇万円を手渡せばよいので、その余は大野らが取得することを認めたものである。

そして、大野らの取得する金額は、大野らの報酬である。大野らは、不動産取引の仲介を業としていた者であるから報酬を請求するのは当然である。

結果的にみて大野らの取り分は、金一、四三〇万円と大きな数字となつたが、これはかつらぎとの解決金を含んでいると当時では考えられていたこともあり(現時点では、抵当債務が不存在であることの証明は可能である)、上告人は承知していた。

六、上告人は、本件土地の売買とかつらぎ商事との問題解決を一体として大野・太田に委託したのであり、金五〇〇万円の手取り額で了承し、その余は全部大野らが報酬として取得することを了解したのである。

これは実質的にみて、上告人は本件土地を大野らに形式的に存在するかつらぎ商事の抵当権名義の負担付きのまま金五〇〇万円で売却したのと同様の結果である。

七、それゆえ、かつらぎ商事の抵当債権が不存在であれば、金一、四三〇万円は全額大野・太田の報酬である(もしその場合大野らがかつらぎ商事に一部支払つたとすれば非債弁済であるから、大野・太田において不当利得返還請求をすべきである)。

本件の場合報酬額が売買価額の約四分の三にも該当し、金額の妥当性に問題があるとしても、業者である大野らに対する報酬支払を全部認めないとする原判決は違法である。(所得税法違反)。

八、上告人は、右等の者の間における金員の動きを具体的に主張立証し、もつて大野・太田の取得分が本件売買仲介等の報酬であることを論証しようと準備していたが、原裁判所は不当にも審議を打切つた。

これは、審理不尽の違法であり、原判決には理由不備の違法を犯している。

以上

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