最高裁判所第三小法廷 昭和53年(行ツ)116号 判決 1979年2月20日
大阪府泉大津市板原五四二番地
上告人
藤原正雄
同所同番地
上告人
藤原尚一
大阪府泉大津市二田町一丁目一五番二七号
被上告人
泉大津税務署長 佐々木裕
右指定代理人
豊住政一
右当事者間の大阪高等裁判所昭和五二年(行コ)第三四号相続税更正賦課決定処分取消、相続税更正賦課処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五三年六月二八日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告人らの上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。論旨は、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 環昌一 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正巳 裁判官 服部高顕 裁判官 横井大三)
(昭和五三年(行ツ)第一一六号 上告人 藤原正雄 外一名)
上告人らの上告理由
一、原判決は憲法二九条に違反する。
原判決は、本件土地が市街地周辺農地に該当するとして付近の宅地の価額を基準として宅地価格を算出し、右金額を基本として土地評価額を算出している。
しかし、本件土地はいずれも農地として現に耕作中のものであり、決して宅地ではなく、宅地の価額を基準として評価をすることは許されるものではない。それから修正を加えるとしても基本が宅地の価格としているところに評価額が常識に反して高価になる原因がある。
しかも、宅地価格を出すについて、比較の対象となった宅地は状況のまったく異る宅地であり比較の対象として妥当でないものである。
かかる評価の仕方で、現に農地として耕作している土地を宅地の価格を基本として評価して課税することにより不当に高額の課税となる。
かかる評価、課税を妥当だとした原判決の判断は財産権を侵害するものとして憲法二九条に違反するものであり破棄を免かれない。
二、原判決には審理不尽、経験則違反の違法がある。
原判決は、本件土地につき、宅地としての価格を被上告人主張のとおりであるとして土地価格を評価している。
しかし、近隣宅地と本件土地の状態が同様であるか否かについては現場検証をするなどして具体的に検討しなければ、比較できるものではない。しかるに、原判決ではかかる審理を全くしないまま、遠くはなれ、状態の異る宅地の価格をもって本件土地評価の基礎としているのであり、その結果は経験則に反する不当な高価な評価になっているものであり、結局、審理不尽、経験則違反の違法があるとして破棄を免れない。
以上