最高裁判所第三小法廷 昭和54年(行ツ)9号 判決 1979年5月01日
上告人 丸矢製材株式会社
被上告人 松本税務署長
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中條政好の上告理由について
所論の点に関する原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判官 環昌一 江里口清雄 高辻正己 横井大三)
上告理由
一 本件は第一審に於て上告人は青色申告承認法人であることを主張し、そこで昭和三九年二月一日より昭和四〇年一月三一日に至る預貯金の利子所得につき被上告人は更正処分を行つたが、法人税法第三一条第一項による調査を経ず且推計を行つた違法を主張したが判断されなかつた。
二 次に被上告人は添附書面の課税標準の計算に誤りがあつたので本件更正を行つたと主張しているが誤りを犯しているものは被上告人並に被上告人の主張を認容している第一審及び第二審の判断である。
第一点 旧法人税法第一〇条第一項を取上げたのは被上告人である。法人税法施行規則第二二条及び第二二条二を適用し、所得税法第十八条の規定により納付した所得税額を法人税から控除するには申告を要する。然るに申告をしなかつたからこの適用を受けられないと被上告人は主張しているが、この考え方は誤りである。
旧租税特別措置法第三条第四項は「昭和三八年四月一日から昭和四〇年三月三一日までに支払いを受けるべき利子所得の支払を受ける者及びその支払いをする者については、所得税法第五九条〔無記名公社債の利子等の受領者の告知〕及び第六一条〔支払調書等〕中利子所得にかゝる部分の規定は、適用しない、と規定している。
右規定は源泉所得税に関する分離をした場合には申告を要しないことを明らかにしたものである。
第二点 利子所得分離課税実施の結果、源泉所得については確定申告を要しない。しかるに利子所得に関しては当然所得税法の規定が適用されるものと解すべきである。
以上