最高裁判所第三小法廷 昭和55年(行ツ)108号 判決 1981年1月27日
東京都港区六本木七丁目七番四号
上告人
森廣充
東京都港区西麻布三丁目三番五号
被上告人
麻布税務署長
小松正
右指定代理人
鈴木実
右当事者間の東京高等裁判所昭和五四年(行コ)第八二号所得税更正処分等賦課決定処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五五年六月一二日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
所論の点に関する原審の判断は正当として是認することができ、右のように解しても違憲の問題を生ずるものでないことは、当裁判所昭和二八年(オ)第六一六号同三〇年三月二三日大法廷判決(民集九巻三号三三六頁)の趣旨に徴して明らかである。論旨は、独自の見解に基づいて原判決を論難するものであって、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 環昌一 裁判官 横井大三 裁判官 伊藤正己 裁判官 寺田治郎)
(昭和五五年(行ツ)第一〇八号 上告人 森廣充)
上告人の上告理由
第一点
控訴判決 理由
上告人の私権(財産権)の侵害の主張の糺明を行なわず、之を争点とする手段とした「年金受給額の二分の一を雑損控除の対象とすべきである」との点を取りあげての立法論は不可解である。
控訴判決 事実
(控訴人の主張)
一、については被上告人は故意に避け控訴審の準備書面(二)(昭和五五年三月一一日)現行法の正当性を主張しているに過ぎない。
このことは上告人の主張を間接的に容認したものと断じたい。尚上告人の控訴審での準備書面(三)(昭和五五年四月八日)での主張を考慮することなく加えて之が解明を望んだ四、について無視された判決は不満である。
特に次の点を強調する。
控訴審の上告人の準備書面(一)(昭和五四年一二月四日)
一、退職年金の原資構成を占める部分
1 上告人の掛金
社会保険控除と対象とならない時のもの
2 上告人の掛金
社会保険控除の対象となった時のもの
前記2は後述の所得税法上の生命保険金に関連しその原資なる生命保険料は所得税法第七六条に基き総所得より控除分があり2と同様の取扱が行なわれて居る。
退職年金の原資構成の要素である掛金の一部が環元される退職年金を給与とみなす所得税法第二九条は明らかに私権(財産権)の侵害である。
尚退職年金と生命保険における年金及満期返戻金の所得税法の不合理を陳述する。
生命保険契約に基く年金及満期返戻金の一時所得金は受給者の生命保険料が主たる原資である。
年金所得については、所得税法施行令第一八三条二で保険料又は掛金の総額を必要経費として認めて居る。
満期返戻金については、所得税法施行令第一八四条で保険料又は掛金の総額を必要経費として認めて居る。
以上は所得税法第三四条で保護されて居る。
上告人の退職年金の掛金
1 社会保険控除の対象とならない分は当然
2 社会保険控除を受け総所得より除かれた分も生命保険料でも等しい取扱を必要経費とせず年金所得金額について所得税法第二九条で給料等とみなすことは、憲法第一四条の平等の原則に反す。
加えて自已の給与所得より制度的に納付した(生命保険料と類似性のある預貯金にも等しい)掛金等に相当する部分まで含めて再度総所得として年金収入金額を課税総所得に算入することは私権(財産権)を侵し、加えて退職後の生活の糧である生活費を減少させる制度は、憲法第二五条の生活権を侵す結果ともなる。