最高裁判所第三小法廷 昭和57年(し)97号 決定 1982年12月14日
申立人
川村巽
主文
原決定を取り消す。
本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
理由
本件抗告の趣意は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四三三条の抗告理由にあたらない。
所論にかんがみ、職権により調査すると、記録によれば、仙台高等裁判所第一刑事部は、昭和五七年六月一一日申立人に対する許欺等被告事件について、「原判決を破棄する。被告人を懲役六年に処する。原審における未決勾留日数中一五〇日を右刑に算入する。原審及び当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。被告人の本件控訴を棄却する。」との判決を言渡し、同判決は同年七月六日確定したが、申立人は同月一二日右負担を命ぜられた訴訟費用の執行免除の申立をし、同高等裁判所第一刑事部は同月一四日訴訟費用の執行免除をすべき理由はないとしてその申立を棄却する旨の決定をし、同月一五日同決定謄本の送達が申立人にされたため、申立人は同月一九日右決定に対し異議の申立をしたところ、原裁判所である同高等裁判所第二刑事部は、同申立提起期間経過後にされた不適法なものとして棄却したことが認められる。しかしながら、刑訴法四二八条三項により準用される同法四二二条によれば、本件異議の申立の提起期間は三日であつて、昭和五七年七月一八日がその末日にあたるが、同日が一般の休日である日曜日であることは公知であるから、同法五五条三項により右提起期間は同年七月一九日までとなり、従つて、同日に申し立てられた本件異議の申立は、その申立提起期間内に申し立てられた適法なものであるといわなければならない。そうすると、本件異議の申立を申立提起期間経過後にされた不適法なものとして棄却した原決定は、法令の解釈、適用を誤つた違法なものであり(なお、原決定に対する本件特別抗告の申立書を受けた原裁判所としては、原決定が申立提起期間経過後にされた不適法なものとして申立を棄却した本件のような場合には、刑訴法四二三条二項により速やかに原決定を更正して新たな決定をすべきものと解する。)、これを取り消さなければ著しく正義に反すると認められる。
よつて、原決定を取り消し、本件異議の申立の当否について審理をさせるため、本件を原裁判所に差し戻すこととし、刑訴法四一一条一号、四三四条、四二六条二項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(横井大三 伊藤正己 木戸口久治 安岡滿彦)