最高裁判所第三小法廷 昭和60年(オ)727号 判決 1989年3月28日
上告人
中濱高明
上告人
中濱ツユノ
上告人
山本すみ江
上告人
中濱幹太郎
上告人
中濱浅吉
上告人
中濱昌夫
上告人
新山宏子
上告人
川村佳江
上告人
中濱泰生
右九名訴訟代理人弁護士
丸茂忍
亡中濱ユクノ訴訟承継人
被上告人
星野房子
同
被上告人
神手清子
右両名訴訟代理人弁護士
森重知之
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人丸茂忍の上告理由第二点について
遺産確認の訴えは、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであり、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象である財産であることを既判力をもって確定し、これに続く遺産分割審判の手続及び右審判の確定後において、当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによって共同相続人間の粉争の解決に資することができるのであって、この点に右訴えの適法性を肯定する実質的根拠があるのであるから(最高裁昭和五七年(オ)第一八四号同六一年三月一三日第一小法廷判決・民集四〇巻二号三八九頁参照)、右訴えは、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
その余の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官安岡滿彦 裁判官伊藤正己 裁判官坂上壽夫 裁判官貞家克己)
上告代理人丸茂忍の上告理由
第一点<省略>
第二点 原判決はその理由第二第一項に於て上告人らが目録第三の土地が市五郎の遺産であることの請求は遺産相続人全員間の訴訟追求でないから不適法として却下しているが法律の解釈適用を誤りたる違法あり破棄さるべきものである。
(1) 上告人の請求は形式上は過去の法律関係の確認を求めるものであるように見えるが、実質はその財産が相続に因る共同所有の状態にあると云う現在の法律関係の確認を求めていると解せられるから共同相続人の全員につき合一に確定すべき固有の必要的共同訴訟と解すべきものであるから、本件についてみるに現在に於ける市五郎の共同相続人には被上告人(被控訴人)及び上告人ら(原判決に於ては被控訴人らと表示しあるも控訴人らの誤記と思料する)のほかに訴外の長女中濱靖子、三女星野房子、養女藤崎幸子がいるから本訴は市五郎の共同相続人の全員によって訴訟追行がされていないとしているがそれは相違ない。
(2) 然し乍ら被上告人は成立に争ない乙第四九号証の一乃至三で明らかなやうに市五郎の遺産であることは認め、又乙第五一号証で認められるやうに市五郎の遺産であるとの調査報告につき相違ないとして署名押印し乍ら登記名義人が自己であることを奇貨として之を処分せんとし、上告人及び被上告人以外の共同相続人は、被上告人に加担して行動するものであって上告人らに同調することは期待できないので止むなく上告人らのみにて提訴するに至ったものであり、之は保存行為であるから共有者(共同相続人)の全員にあらずとも訴訟追求は当然許さるべきものである。
第三点<省略>