最高裁判所第三小法廷 昭和63年(オ)468号 判決 1991年12月17日
上告人
岩佐嘉壽幸
右訴訟代理人弁護士
仲田隆明
藤田一良
菅充行
新谷勇人
浦功
熊野勝之
柴田信夫
畑村悦雄
石川寛俊
水島昇
菊池逸雄
被上告人
日本原子力発電株式会社
右代表者代表取締役
岡部實
右訴訟代理人弁護士
溝呂木商太郎
右当事者間の大阪高等裁判所昭和五六年(ネ)第七五五号損害賠償請求事件について、同裁判所が昭和六二年一一月二〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人仲田隆明、同藤田一良、同菅充行、同新谷勇人、同浦功、同熊野勝之、同柴田信夫、同畑村悦雄、同石川寛俊、同水島昇、同菊池逸雄の上告理由について
上告人が本件発電所内において本件作業中に被曝したことを認めるに足りる証拠はないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右認定に係る事実関係の下において、上告人の被上告人に対する本件請求を棄却すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができる。原子力損害の賠償に関する法律三条一項の規定は、同法二条二項にいう原子力損害が発生した場合において、原子力事業者が原則として無過失責任を負う旨を定めたものであって、原子力損害の有無及びその因果関係の存否について所論の立証責任の負担まで規定したものではなく、原判決に所論の違法はない。論旨は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己 裁判官 園部逸夫 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 可部恒雄)