大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和63年(ク)304号 決定 1988年10月06日

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告理由のうち、民訴法四一九条ノ二第一項の規定が憲法三二条に違反する旨をいう点は、民訴法四一九条ノ二第一項の規定が憲法三二条に違反するものでないことは、当裁判所の累次の判例とするところであり(昭和三七年(ク)第三六〇号同三八年二月二二日第二小法廷決定・裁判集民事六四号六〇三頁、昭和四一年(ク)第四四四号同四二年二月三日第三小法廷決定・裁判集民事八六号二四三頁、昭和四〇年(ク)第三二八号同四二年三月六日第二小法廷決定・裁判集民事八六号四四九頁など)、また、不動産引渡命令の手続が憲法に違反する旨をいう点についても、民事執行法による不動産競売事件における引渡命令は、当事者の主張する実体的権利義務の存否を終局的に確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判ではないから、公開の法廷における口頭弁論を経ないで引渡命令及びこれに対する執行抗告を棄却する決定をしても、これをもって憲法三二条又は八二条に違反するということができないことは、当裁判所の判例(昭和四一年(ク)第四〇二号同四五年六月二四日大法廷決定・民集二四巻六号六一〇頁)の趣旨に照らして明らかであるから、論旨はいずれも理由がなく、その余の部分は、原決定の単なる法令違背を主張するものにすぎず、特別抗告適法の理由に当たらない。

よって、本件抗告を棄却し、抗告費用を抗告人に負担させることとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官安岡滿彦 裁判官伊藤正己 裁判官坂上壽夫 裁判官貞家克己)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例