最高裁判所第三小法廷 昭和63年(行ツ)158号 判決 1990年10月02日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人田倉整、同加藤恭介の上告理由第一点について
憲法三二条所定の裁判を受ける権利は、司法作用の対象となるべき訴訟事件につき裁判所の判断を求めることができる権利をいうものであることは当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和二六年(ク)第一〇九号同三五年七月六日大法廷決定・民集一四巻九号一六五七頁参照)。特許(実用新案登録)を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときに、共用者の全員が共同してこれをしなければならないものとするか否かは、特許庁の審判手続における問題であって、立法政策の問題に帰着し、憲法三二条に違反するかどうかの問題を生じない。右の違憲をいう論旨は前提を欠き、採用することができない。所論中には、上告人河口湖精密株式会社に対して本件出願の拒絶査定謄本の送達がされなかったことを前提にする部分があるが、原審の適法に確定したところによれば、本件出願の拒絶査定謄本は、昭和六二年八月一八日に共同出願人である上告人両名の代理人金山敏彦に送達されたことが明らかであり、所論が前提とするところは、原審の確定事実に沿わないものにすぎない。
同第二点について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、実用新案登録を受ける権利の共有者全員が共同して本件審判を請求したものということはできず、本件審判請求は、実用新案法四一条で準用する特許法一二三条三項の規定に違反し不適法なものであって補正することができないとし、拒絶査定に対して審判を請求できる期間が経過した後に前記共有者全員を審判請求人とする手続補正書が提出されたとしても、本件審判請求が適法なものではないとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は、本件出願の拒絶査定謄本が上告人河口湖精密株式会社に送達されなかったことあるいは実用新案登録を受ける権利の共有者の一名が実用新案登録を受ける権利を放棄していたことを前提にするなど、原審の認定の認定に沿わない事実に基づいて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
(裁判長裁判官 園部逸夫 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 可部恒雄)