最高裁判所第三小法廷 昭和63年(行ツ)190号 判決 1989年4月25日
京都市上京区元誓願寺通千本西入松屋町三八七番地
上告人
周防武史
右訴訟代理人弁護士
高田良爾
京都市上京区一条通西洞院東入元真如堂町三五八番地
被上告人
上京税務署長
川瀬栄一
右指定代理人
星野英敏
右当事者間の大阪高等裁判所昭和六二年(行コ)第三三号所得税更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和六三年九月二七日言い渡した判決に対し、上告人から全部棄却を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人高田良爾の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 貞家克己 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡満彦 裁判官 坂上壽夫)
(昭和六三年(行ツ)第一九〇号 上告人 周防武史)
上告代理人高田良爾の上告理由
一、原判決は、一審判決同様被上告人の主張する同業者一件(松井機業店)は上告人と類似する同業者であり、同業者一件の所得率を上告人に適用することは合理性を有すると判示した。しかし、以下述べるように同業者一件と上告人とは、取引の形態、取引形態に基づく商品の完成度及び取次商店の点で異なつており、その相違は、類似同業者であると判断することのできない程の決定的相違である。従つて、原判決は、この決定的相違を無視して判断しているから、この点において既に棄却を免れない。
(一) 取扱商品について
<1> 同業者は原判決が判示するように、全商品の生産量のうち一五パーセントの割合でテーブルセンターを製織しているとのことである。言うまでもなく、ふくさとテーブルセンターとは全く異質の製品であり、ふくさとテーブルセンターとは原価率の点において相違があることが充分考えられる。ところが、上告人はふくさのみを製織しており、同業者のようにテーブルセンターの取り扱いの有無によつて類似同業者といえるか否かについて全く判断をさけている。テーブルセンターを一五パーセント製織していても、売上金額に占める割合がわずかであるとの証明がなされない限り、類似同業者であると判断することは絶対に許されない。
(二) 取引形態について
<1> 類似同業者の有無を判断するうえで、どのような取引形態をとつているかは、所得率、原価率、一般経費率及び特別経費率の点においてそれぞれ決定的な差異をもたらすものであることは充分推測しうるところである。
<2> 原判決の判示によれば、同業者は完成品を製織し、販売先は約三〇件程の問屋であるとのことである。完成品を製織し、販売先が三〇件もあるということは基本的には同業者の判断あるいは自由裁量によつて取引先を選択し、商品の値段も決めることができるのである。それに比べ、上告人は実質わずか二件の問屋であり同業者のように取引先の選択及び商品の値段を決めることが基本的にはできない。いわば、同業者は商人であり、上告人は職人であると言うことができる。
以上