大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和22(れ)102 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人今益之助上告趣意書 一は上告人ノ本籍及住居ハ福島県岩瀬郡c村大字d

字hi番地ナルニ原審ニテハ其本籍及住居ヲ同郡a村大字b字hi番地ト判示シ以

テ上告人ノ同一性ヲ不明ナラシメ又上告人ノ第一審相被告人A、B、C、D、E、

F、G等ハ何レモ上告人ト同部落ナルc村大字dノ住民ナルニ原審ニテハ同人等ヲ

岩瀬郡a村大字b部落ノ者ナリト判示シ以テ原審ノ認定シタルHナル者ハ他村ナル

岩瀬郡a村ノ住民ニシテ上告人ト同名異人ニ非ザルヤト疑惑ノ念ヲ深カラシムルノ

ミナラズ原審判示ニ依レバ本件犯所モ亦岩瀬郡c村大字f字j地内道路附近ニ非ズ

シテ全然方向違ナル岩瀬郡a村ナリトノ感ヲ懐カシメ事実ニ反スル事甚シク斯ノ如

キハ刑事訴訟法第四百十条第十九号ニ違反スルモノニシテ原審判決ハ到底破毀ヲ免

レザルモノト信ズ。と云ひ、三は上告人ハ資性善良ニシテ前科ナク是迄正シク真面

目ニ生活シ来リタル処前記ノ動機ニ依リ偶発的ニ本件犯行ヲ為シタリト雖モ、今ヤ

衷心ヨリ自己ノ非行ヲ悔悟改悛シ居ルヲ以テ再犯ノ虞ナク又被害者Iノ父Jハ本件

ニ付予審判事ノ訊問ニ対シ犯人サヘ改心シテ真人間ニナツテ貰ヘルナラ出来得ルダ

ケ寛大ニ御願シテ穏便ニ済ム様ニト考ヘテ居リマスト情味溢ルヽ寛恕ノ意思ヲ表示

シ一方上告人ノ実兄Kハ上告人等ノ為ニ他ノ相被告人等ノ父兄ト共ニIノ父Jニ謝

罪シテ弔慰金ヲ贈リ且Iノ霊前ニ礼拝シテ其冥福ヲ祈リ尚其ノ他ノ各被害者ニ対シ

テモ夫レ夫レ見舞金ヲ贈リ以テ謝意ヲ表シ只管上告人ノ更生ヲ希ヒ居リテ此兄Lノ

誠意ト上告人ノ改悛トハ両者相俟ツテ上告人ハ必ズ更生ノ上社会ニ対シ応分ノ貢献

ヲ為スモノト信ズ、殊ニ現今ニ於ケル刑罰ノ基礎観念ハ昔日ノ応報主義ノ域ヲ脱シ

テ人権ノ尊重ニ重点ヲ置ク所謂主観主義目的主義教育主義ニ移行シ刑罰ノ目的ハ応

報主義ノ如ク犯人ノ処罰ヲ主眼トスルモノニ非ズシテ犯人ノ悪性ヲ矯正シテ犯罪ヨ

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リ社会ヲ防衛スルニ在リト為シ、科刑ハ其手段ニ過ギズト為スモノニシテ此見地ヨ

リ既ニ全ク改心ノ上悪性ヲ矯正セラレタル上告人ニ対シテハ昔日ノ応報主義ノ旧慣

ニ捉ヘラルルコトナク刑ノ執行猶予ノ恩典ヲ与へ上告人ヲ更生セシムルコトハ第一

審相被告人等トノ刑ノ均衡上ヨリモ亦刑事政策上ヨリモ極メテ緊要ノ事ナリト信ズ

と言い、

四は、以上ノ理由ニヨリ原審判決ハ重大ナル事実ノ誤認アルコトヲ疑フニ足ルベ

キ顕著ナル事由アルト共ニ刑ノ量定甚シク不当ナリト思料スベキ顕著ナル事由アル

ヲ以テ当然破毀セラルベキモノト信ズと言うのである。

よつて原判決を査閲すると被告人の肩書住所に福島県岩瀬郡a村大字bとあるの

は、同県同郡c村大字dの誤記であり、犯罪の場所としてe村大字f字g附近とあ

るは、前記c村大字f字g附近の誤記であること記録上明かであつて原判決書の記

載は粗雑のそしりを免かれないが右のような誤記があつても被告人の氏名及び生年

月日等の記載から見れば被告人の同一性を認めるには十分であるし又犯罪の場所を

判決に示すことは裁判所の管轄の有無等法律適用の当否を判断する必要に基くので

あるから本件犯罪が福島県岩瀬郡内で行われたことを原判文から知りうる以上原判

決には所論のような理由不備の違法はない。又原判決における刑の量定不当もしく

は重大な事実誤認を上告の理由とすることは、日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法

の応急的措置に関する法律第十三条第二項によつて憲法施行の日から許されないの

であるから、その他の論旨も理由がない。

以上の理由は裁判官全員の一致した意見であるので刑事訴訟法第四百四十六条に

より主文の通り判決する。

検察官下秀雄関与

昭和二十二年十一月十八日

最高裁判所第三小法廷

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裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 庄 野 理 一

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

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