大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和23(れ)1705 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人岩田春之助の上告趣意について。

被告人が錯誤によつて真意でない供述をした場合、後にその供述を訂正したとき

には、その錯誤が明かである限り、後の供述を真意によるものとして取扱わねばな

らぬことは言うまでもないことである。しかし、本件においては、第一審公判調書

の記載によると、被告人は裁判長の訊問に答えて、家を出るとき所論の小刀一個を

持つて出たことを認めた上、種々問答を交わした後、右の供述を変更して「小刀は

後日拾つたものである」と全く新な供述をしたものであることが窺われ、錯誤によ

る供述を訂正したことが明かであるとは言われない。このように前後相反する供述

がなされた場合いずれの供述が真実に合するものとして採用すべきであるかは、事

実審たる原裁判所が諸般の状況を参酌して合理的に決することのできる自由裁量の

問題であつて、所論のように、必ず後になされた供述を採用しなければならないと

いう採証上の法則はない。されば原審には所論のように採証上の法則に反して証拠

を採用した違法はなく、論旨は結局、原裁判所がその任された範囲内で適法にした

証拠の取捨判断を非難するに帰着するので、採用することができない。

弁護人中川正夫の上告趣意書は法定の期間経過後の提出にかかるのでこれに対し

ては判断を与えない。

よつて上告を理由のないものと認め、旧刑訴法第四四六条に従い主文のとおり判

決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

検察官 長谷川瀏関与

昭和二四年四月一九日

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最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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