大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和23(れ)2027 判決

主 文

原判決を破毀する。

本件を東京高等裁判所に差戻す。

理 由

本件は、(1)被告人Aの暴力行為等処罰に関する法律違反事件、(2)同人の

麻薬取締規則違反事件、(3)被告人AおよびBの銃砲等所持禁止令違反事件の併

合であるが右の(1)および(3)について上告が起されており、被告人Aの弁護

人徳岡二郎の上告趣意書およびBの弁護人海野普吉ならびに位田亮次の上告趣意は

末尾に添えた別紙記載の通りである。

(一) 被告人Aのための徳岡弁護人の上告論旨第一点および第二点は、公判調

書面によると第二回公判が昭和二十三年八月三十日に開かれたことになるが、同日

には被告人Aは出頭していない、すなわち原審判決には事実の審理をしないで判決

をした違法があり、また証明力なき調書を証拠にした違法がある、と主張する。な

るほど原審第二回公判調書のはじめに「八月三十日」とありその末尾に年月日が書

いてないことは指摘された通りであるが、記録全体から綜合すると、右「八月三十

日」は「九月二十日」の誤記であり、すなわち八月三十日のは第一回公判で、その

時にはAは出頭しなかつたが、第二回公判は九月二十日で、それにはAが出頭して

いること明白であるから、原審が事実の審理をしないで判決を下したわけではない。

そして調書に多少の誤記遣漏があつてもその証拠力を害するものでないことについ

ては、大審院以来の判例がある。(大正一二年(れ)第一八八六号同一三年二月九

日第四刑事部判決、昭和二三年(れ)第七〇二号同年一〇月二八日最高裁判所第一

小法廷判決、昭和二三年(れ)第一〇二六号同二四年三月五日最高裁判所第二小法

廷判決)。

(二) 同上告論旨第三点は、原審において被告人を審理するに当り被告人に対

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して如何なる理由により控訴をなしたかを尋ねていないと非難する。なるほど第二

回第三回公判調書を見ても被告人Aに対し控訴の趣旨をたずねていないが、控訴審

において審理のはじめに控訴の趣旨をたずねることは旧刑事訴訟法の要求するとこ

ろでなく、ただ裁判所が取調の都合上、争点を明かにし控訴人の不服の範囲程度を

あらかじめ知つて置こうとするだけの意味であるから、それをしなかつたから違法

だとは言えない。すでに当裁判所にその趣旨の判例がある(昭和二三年(れ)第五

八七号同年九月九日第一小法廷判決)。

(三) 海野位田両弁護人の被告人Bのための上告趣意書第一点は、問題の拳銃

が被告人Bの所持からCなる者の手を経て被告人Aの所持に移つた事実を認定した

証拠の一つとして挙げている被告人Bに対する公判請求書につき旧刑事訴訟法第三

四〇条第三四七条の要求する手続を行つていないことを指摘し、適法でない証拠を

断罪の資に供した違法があると主張する。この点は全く論旨の通りであつて、右の

証拠調をしたことが記録にあらわれていない。すなわち原審ではすべて第一審判決

にもとづいて検事も陳述し裁判長も訊問しているのであつて、検事が公判請求書に

よつて公訴事実を説明するとか裁判長が公判請求書を続み聞かせて犯罪事実を認め

るか否かを被告人にたずねるとかいうこともしていないのである。この点に付いて

は前に当第三小法廷の「公判請求書記載の犯罪事実を続み聞かせなければ第一審公

判調書中にある公判請求書記載の犯罪事実を認めたという被告人の供述の内容が不

明であるので、かかる公判調書については適法な証拠調べがなされたこととならず、

従つてこれを証拠に引用することの違法であることもいうを待たない」という適切

な判例があるのであつて(昭和二三年(れ)第一八二号同年五月四日判決)、上告

論旨は理由があり、原判決はこの点で破毀をまぬかれない。

(四) 同上告論旨第二点は、巡査部長(D)の訊問調書中の被告人の供述なり

として原判決が証拠として挙げている部分が右の調書中に見えないことを指摘し、

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原判決は虚無の証拠に拠つて事実を認定した違法がある、と主張する。この点も原

判決の引用の誤りであつて、右の供述記載は警部補(E)の訊問調書中にあるので

ある。要するに明白な誤記であつて、原審の粗忽は咎むべきだが、原判決をくつが

えすべきほどの瑕疵とも思われない。

(五) 同上告論旨第三点は、原判決は被告人Bが「茨城県新治郡a村大字bc

番地なる被告人居宅において」拳銃を所持したと言うが、この地名は被告人の本籍

地に過ぎず、同人がその拳銃を所持した場所ではないから、原判決には証拠に拠ら

ずして事実を認定した違法がある、と主張する。これまた所論の通りであつて、本

件につき起訴状以来、犯罪の場所は被告人の居住地なる茨城県d町ef番地、とい

うことが繰返されており、本籍地は一度も問題になつたことがないのだから、原判

決がどうしてかような大まちがいをしたか了解に苦しむほどである。しかし本件に

おける問題は拳銃の所持そのものであつて、その拳銃をその人が所持していたとい

うことが証明されれば、その所持の場所はさしたる問題でないから、原判決破毀の

理由となるほどの欠点とも言われまいと思う。

(六) かくして前記(一)(二)(四)(五)については、原判決に一々大過

失小過失があるものの結局上告論旨を理由無しとして排斥し得るが(三)の欠陥に

至つては救済の途がないこと、その部分に述べた通りである。

そしてこれは被告人Bに関する問題で、被告人Aのためにはこの点が上告理由に

なつていないが、被告人Aについての拳銃所持の原判決第三の関係は被告人Bの同

第五の関係と一括して証拠説明がしてあり、問題の公判請求書の記載は本件拳銃が

禁止令においてその所持を禁止する程度の危険力を備えたものかどうかという重要

な問題にかかつているのだから、被告人Aについてもこれを不問に附し得ない。

この点については、相被告人の一人につき公判手続の違法を理由として判決を破

毀するときは、他の相被告人の上告論旨にその事がなくとも、その公判調書中の供

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述を証拠とした以上、旧刑事訴訟法第四五一条によりその被告人についても破毀を

なすべきもの、という趣旨の当裁判所の判例があるのであつて(昭和二三年(れ)

第七〇三号同年一〇月三〇日第二小法廷判決)、本件においても被告人Bについて

の破毀の事由は共同被告人Aにも共通であるから全部について破毀差戻を為すべき

ものと認める。

よつて旧刑事訴訟法第四四七条第四四八条ノ二第一項第四五一条により主文のと

おり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

検察官 長谷川瀏関与

昭和二四年五月一七日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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