大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和23(れ)554 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

被告人Aの上告の理由は、末尾添付の上告趣意書と題する書面に記載するとおり

である。

論旨は、被告人が警察署において不法に監禁され、違法若しくは不当な取扱をう

けたことを非難するにある。しかし、たとえ、そのような事実があつたとしても、

それがために所論のように公訴の提起が無効になると云ういわれはなく、又それが

ために被告人に対し無罪の判決を言渡さなければならないという筋合もない。原審

判決に対する上告は、その判決自体か、又はその判決の基本となつた審判の訴訟手

続かが法令に違反したことを理由としなければならないものである。仮りに被告人

が、警察署に於て所論のような取扱を受けたとしても、それは右の何れの場合にも

あたらないことであるから、論旨は上告の理由として適法なものと云うことができ

ない。

次ぎに論旨は、原審が、被告人の申請した証人六人の中僅かに二人のみを許可し、

実地検証の際に被告人を出席せしめないで右の証人を訊問したことを非難している。

然し証拠調の範囲は原審の専権に属する事項であるから、原審が、被告人の申請し

た証人の中のある者を採用しなかつたからとて、そのことを違法ということはでき

ない。

更らに記録によれば、原審第三回公判に於ける証拠調にあたり、裁判長は、他の

証拠書類と共に、原審に於ける検証調書及び各証人の訊問調書を読み聞け又はその

要旨を告げ、その都度被告人に対し意見弁解の有無を問い、且右書類の作成者及供

述者を公判廷に於て訊問することを請求し得る旨並に他に利益の証拠あらば提出し

得る旨を告げ、被告人は別になしと答えている。

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本来、公判廷外における訊問に対する供述は、それがそのまゝ証拠となるのでは

なく、その調書が書証として証拠になるのであり、その内容は必ず被告人に読み聞

けられ、それに対して不満があれば、被告人は更に審問することを請求し得るもの

である。そうして前記のように裁判長は被告人に対し特に右の請求ができることを

告げたにも拘はらず、被告人からその請求をしなかつたのであるから、被告人が所

論の証人訊問の際に立会はなかつたことは、原判決破毀の理由とならないものとい

うべきである。(昭和二十三年(れ)第一〇五四号同年九月二十二日言渡最高裁判

所判決参照)。

この外にも原判決には違法と認められる点は存しないから、論旨は凡て理由がな

い。

弁護人三野頼次の上申書と題する書面は、寧ろ上告の理由のないことを述べてい

るのであるから、上告趣意書とは認められない。従つてこれに対する判断を省く。

以上の理由によつて刑事訴訟法第四百四十六条に従い主文の通り判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

検察官 岡本梅次郎関与

昭和二三年一〇月一二日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

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