最高裁判所第三小法廷 昭和23(オ)153 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告理由は末尾添附別紙記載の通りでありそれに対する当裁判所の判断は次ぎの
如くである。
賃貸借においては賃貸人か一方的に賃貸の意思や賃料を受領する意思を無くした
からといつて、それによつて賃借人の賃借権か消滅するものでない。それ故本件に
おいて、たとえ上告人が訴外Dに賃貸する意思を無くしても亦同人から賃料を受領
する意思を有せさるに至つても、それによつてDの賃借権が消滅することはない。
Dが本件家屋を占有する意思を全然有しないとか、賃借の意思を有しないとかいう
ことは原審の認めない処であり又そう認めなければならない証拠もない。
論旨ではDか「上告人との手は切れて居る」と証言したといつて居るけれどもD
の証言調書中にはそういう記載は少しもない。只同人の妻の証言調書中に「上告人
との手は切れたと思う」という様な記載があるけれども、妻か「切れて居ると思う」
という様な意見を述べたからといつて、それによつてDと上告人との賃貸借が解除
されたものと認定し得るものではない。賃貸借においては貸借人が自分で直接占有、
使用しなければならないものではない。原審認定の様に(上告人の承諾を得た以上)
Dが自分の代りに被上告人を住居させてもかまわない。(此の場合Dの占有により
被上告人も間接占有を有するので、論旨のいう様に全然Dの占有が無いというもの
ではない)
原審は獨立の留守番権などいうものを認めたのではない。Dと上告人との賃貸借
は解除されたという上告人の主張事実は認められないから尚存続するものと認めな
ければならない。そしてDが自己の賃借権に基いて被上告人を住まわせて居るのだ
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というのであつて、原審挙示の資料によればそういう認定が出来なくはない。右の
認定がなされた以上原審がこれに基いて上告人の請求を棄却したのは当然で違法は
ない。尚轉借の主張の中にはおのずからDの賃借権に基いて使用して居るのだと、
いう主張も含まれて居るものと見られるから原審が主張なき事実を認定したものと
はいえない。論旨は要するに原審の採用しない証拠又は原審の認定しない事実を基
礎として原判決を攻撃するもので採用に価しない。
よつて上告を理由なしとし民事訴訟法第四〇一条第九五条第八九条に従つて主文
の如く判決する。
以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 河 村 又 介
裁判官 穂 積 重 遠
裁判官島保は差支のため署名捺印することができない。
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
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