大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)1243 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

弁護人長島忠信、同小林賢治の上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りで

ある。

弁護人長島忠信上告趣意第一点について。

原判決において証拠に挙示した原審公判における被告人Aの供述を調べて見るに、

裁判長は被告人Aに対し第一審判決書摘示の犯罪事実中第二事実中の(二)を読聞

かせたところ、被告人Aは其通り相違ありませんと答えている。

裁判長はさらに、これはどの様な品物だと思つたかとたづねたのに対しAは、初

めは会社の払下の品物だと思いましたが九月六日の夕方トラツクに積んでいるBC

がうるさい品物だからと言う様なことを言つていたので、大体はどの様な品物かが

判りましたと述べている。右Aの供述は明確な言葉で賍物であることが判つたと述

べているのではないがしかし裁判長の訊問の全趣旨に鑑みれば被告人Aの右供述は、

同人において判示物件は賍物であることの情を知つていた旨を述べたものと認め得

る。もつとも論旨は、判示物件は取引が終つてそれを自動車で運搬する際はじめて

所謂うるさい品物と判つたのであるから賍物故買の事後の幇助行為と見なければな

らないと主張するが、元来刑法が賍物に関する行為を犯罪として処罰するのは、そ

の行為がその物に対する被害者の権利の実行を不能ならしめるか或は困難ならしめ

る為めであるから、現実に賍物の移転のある際に賍物たるの情を知つて居れば賍物

罪は成立するものといわなければならない。大審院も右に述べたと同様の判例を示

して居り、今之れを改める必要は認められない(昭和六年(れ)第一一四九号同六

年一一月九日大審院判決参照)さすれば所論被告人Aの供述により明らかなように、

被告人Aは判示物件をトラツクに積んでいる際所謂うるさい品物であることを知つ

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たのであるから、被告人Aが本件賍物故買罪の共同正犯としての責を免れ得ないも

のといわなければならない従つて原判決は所論の如き理由不備の違法はない。所論

各証拠は原判決において事実認定の証拠としたものではないばかりでなく、かかる

証拠があつたとしても被告人Aの前記供述により、判示物件が賍物であることの情

を知つていたものと認定するさまたげとなるものではない。論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決の確定した事実は、被告人AはD外一名と共謀の上判示日時頃判示場所に

おいてEから、人造バター五〇ポンド入一八箱を盗賍品であることの情を知りなが

ら、代金合計七万二千円で買受けて賍物故買をしたというのである。之に対し論旨

は被告人Aの所為は賍物故買ではなく、賍物故買の事後の幇助にすぎないと主張す

る。しかし原判決挙示の証拠によれば原審の認定は相当であつて何等法則に違背す

るところはない。論旨は結局独自の見解に基いて原審の事実誤認を主張することに

帰し適法の上告理由とはならない。そして原判決は被告人の所為は所論の如き事後

幇助と認定しないのであるから、共同正犯として処罰したことは当然であつて、何

等の違法はない。論旨は理由がない。

弁護人小林賢治の上告趣意第一点について。

しかし公判調書の記載とこれに引用された第一審判決の事実摘示とによつて、被

告人が公判廷で判示同趣旨の供述をしたことが明らかな場合、判決で其供述を証拠

とするには右引用の第一審判決を特に掲記する必要がないことは、当裁判所判例の

示すところである。(昭和二三年(れ)第一二七七号同年一二月一八日第二小法廷

判決参照)従つて原判決において所論被告人の原審公判廷における供述を証拠に挙

示しただけで、所論第一審判決書を証拠に挙示しないからとて採証法則の違背はな

く、また理由不備の違法もない、論旨は理由がない。

同第二点について。

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本件記録を精査するに被告人等に対する公判請求書に公訴事実として「司法警察

官意見書記載の犯罪事実」と記載されているに拘わらず、右引用にかかる司法警察

官の意見書なるものは存在しないことは所論の通りである。しかし第一審公判調書

を調べて見るに、立会検事は司法警察官事件送致書記載の犯罪事実の通り公訴事実

を陳述した旨の記載があり、且判事も右事件送致書記載の犯罪事実に基いて被告人

を訊問していることを認め得るし、右事件送致書は本件記録中に現存している点に

鑑みれば、公判請求書に司法警察官意見書とあるは司法警察官事件送致書の誤記で

あることを認め得るものである。そして被告人等に対する右事件送致書中には明ら

かに被告人等の犯した犯罪事実の記載があるから、所論のように公訴手続は無効で

あるとはいい得ない。そして原審公判調書によれば、立会検事は第一審判決書記載

の摘示事実に基いて公訴事実を陳述していることは記録上明らかであるし、右公訴

事実と原判決が認定した事実とを比照すれば、原審において審判の請求を受けない

事実について有罪を言渡したものでないことは明らかであるから、論旨は理由がな

い。

よつて旧刑事訴訟法第四四六条により主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

検察官 田中巳代治関与

昭和二四年一一月一日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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