大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)1594 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

全被告人の弁護人奥山八郎、安田重雄、東里秀、井上忠巳の上告趣意書は、末尾

に添えた別紙記載の通りである。

(一)論旨第一点は、原判決が各証拠を綜合して数個の事実を一括認定したため

に、各事実かその成り立ちの状況事情を全然異にし従つて各事実間に同一視し得な

い性格上の相違のあることを観過する重大な過失を犯したと非難する。なるほど記

述か多少混雑している気味はあるがそれぞれの証拠とそれぞれの事実を対照すれば

原判決の認定の根拠を識別し得るのであつて、論旨は結局事実認定の非難に帰着し、

上告の適法な理由にならない。

(二)論旨第二点は問題になつた金銭の授受は原判決か認定したような選挙運動

に対する報酬の趣旨ではなく貸借にほかならぬ、との主張であつて、これまた事実

誤認の非難に帰着し、上告の理由にならない。

(三)論旨第三点は、原判決か被告人Aか選挙運動のために戸別訪問をした事実

を認定処罰したことを問題にするのであるが、まずその(一)に、原判決は審判の

請求を受けない事実について審判した違法かある、と非難する。すなわち原判決に

は被告人かB方を訪問したとあるが、その事は検事が公訴事実を陳述した中に含ま

れていないと、いうのである。しかし衆議院議員選挙法第九八条に規定するいわゆ

る戸別訪問の罪は、二人以上の選挙人の住居を訪問した事実を包括する一罪を構成

するものと解すべきであるから(昭和八年(れ)第一二四五号同年一一月六日大審

院第一刑事部判決)、たとい公判審理において検事か包括一罪を構成すべき関係に

ある事実の一部について陳述しなかつたとしても、その他の部分について陳述があ

つた以上裁判所はその事実の全部について審判し得るものと解すべきである。しか

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も本件記録をしらべて見ても、原審検事か特に前記B方訪問の事実を本件起訴事実

から除外したものと認めなければならないような形跡はどこにも発見し得ないので

あつて、論旨はいずれにせよ理由がない。

(四)論旨第三点の(二)は、原判決は虚偽の証拠に基いて前記B方を訪問した

事実を認定した、と非難する。しかし原審が採用した全証拠を綜合すれば、充分に

前記戸別訪問の事実を認定し得るのであつて、論旨は独自の見解を以てその認定を

攻撃するにほかならず上告の理由にはならない。

(五)論旨第三点の(三)は、原判決か、被告人Aか前記B方とC方を訪問した

事実につき、右二回の訪問が「犯意を継続して」行われたものと認め、連続犯とし

て処断したのは、法令の解釈を誤つたものである、と非難する。なるほどこの点に

ついての原審の観念は必ずしも正確でないが、「犯意を継続して」と言つているの

は、前記B方とC方の訪問との間に九日のへだたりがあるが、被告人Aの最初から

の連続訪問の意図の実現である、ということを示したものと考えられる。そして「

衆議院議員選挙法第九八条第一項ニ所謂戸別訪問ニハ、必ズシモ戸ヨリ戸へ間断ナ

ク歴訪スル場合ノミニ限ラズ、二人ノ選挙人宅ヲ日時ヲ異ニシテ訪問スル場合ヲモ

包含スルモノトス」という判例(昭和八年(れ)第一、四三四号同年一一月二七日

大審院第二刑事部判決)もあるのであつて、この点についての原判決の結論は誤つ

ていない。すなわち原判決か包括一罪として処断すべき本件を連続一罪として取扱

つたとしても、帰するところは一罪として処断したわけであるから、判決には少し

も影響なく、論旨は理由がない。

(六)論旨第四点は結局、被告人A、D両名に対する原判決の刑が甚しく過重で

ある、というに帰着する。しかしかような量刑不当の主張は、適法な上告理由にな

らない。また論旨は、右被告人両名を衆議院議員選挙法第一三七条第三項の恩典に

浴せしめられたい、と申し立てるが、上告審においては、原判決に違法のかどがあ

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つて破棄自判をするような特別の場合を除いては、さような裁判をすることはでき

ないのであつて、その申立に応じがたい。

よつて旧刑事訴訟法第四四六条に従い、主文の通り判決する。

以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。

検察官 田中巳代治関与

昭和二四年九月二七日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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