最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)2068 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人畠山仁市郎の上告趣意書は末尾に添えた別紙の通りであつて、論旨が多岐
にわたるが、これを五点に要約して、左の通り判断する。
(一) 「被告人は砂糖の公定価額を知らなかつたのだから犯意を欠く、という
のが論旨の重点である。しかし、記録についてつぶさにしらべて見ると、被告人は、
砂糖の公定価格を知らなかつたにしても、本件買受行為が公定価格をはるかに超過
する価額によるものであることは知つていたものと認められる。」すなわち原判決
の事実摘示によれば、被告人は八貫目入砂糖一袋を「法定の統制額を一万三千三百
六十円超過せる代金二万千六百円で買い受け」たのであつて、公定価額を上廻るこ
と二倍半以上であるそして原判決が証拠に採つている原審公判廷における供述中で
被告人は、「当時の砂糖の価格としては非常に安かつたので」買つた、と言つてい
るのであるが、その「当時の価格」というのは闇値を意味すること明白であり、当
時の闇値はもつと高かつたものと思われるが、ともかくも被告人がその買受が闇取
引であることを知つていたことは認められるのであつて、たとい砂糖の公定価額を
知らなかつたとしても本件買受けについて犯意を欠いたとは言い得ない」論旨は結
局原判決の事実認定を非難することになつて、上告の適法な理由にならない。
(二) その当時の事情として砂糖を入手するには本件のごとき方法以外の手段
がなかつたのだから、本件は犯罪を構成しないというのであるが、統制令は正にそ
の許す方法以外の入手行為を禁じているのであつて、他の方法がなかつたというこ
とはその違反に対する弁解とならず、論旨は理由がない。
(三) 本件行為には実害がない、との主張は、到底採用し得ない。既に公定価
額を超過する買受行為をした以上、国家の期待する物価の安定を乱し社会の経済秩
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序を破り国民生活を害するものであつて、決して実害なしとは言い得ないのであつ
て、論旨は理由がない。
(四)買受けた砂糖は家庭用であつて営業用ではなかつた、という弁解は、それ
ゆえに物価統制令違反でないという結論とならず、また原審の事実認定に反し、論
旨は理由がない。
(五) 量刑不当の主張は、適法な上告の理由にならない。
よつて旧刑事訴訟法第四四六条に従い、主文の通り判決する。
以上は当小法廷裁判官全員一致の判決である。
検察官 長谷川瀏関与
昭和二四年一二月一三日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 穂 積 重 遠
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