大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)2485 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人天野敬一の上告趣意は、末尾に添えた書面記載の通りである。

上告趣意第一点について。

刑法一四八条に規定する銀行券の偽造は、通常人が不用意にこれを一見した場合

に真正の銀行券と思い誤る程度に製作されることを要することは言うまでもない。

されば、原審がその判決において押収に係る偽造百円日本銀行券八三三二枚を証拠

中に引用して被告人は他の者と共謀の上行使の目的を以て「二重合せ仙花紙に色別

にして表は四回刷裏は二回刷で百円札の文字及び模様を印刷して通用の日本銀行券

百円札合計八三三二枚を偽造したもの」と説明したのは、前記の程度に製作された

ことを判示した趣旨と解することができる。そして、所論の発券局長印は、、百円

銀行券の裏面に印刷された小形の印影であつて、これがなくとも本件銀行券が冒頭

に説明した程度に製作されたものと認定することを妨げるものではない。それ枚、

論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決の引用している証拠、殊に押収に係る偽造百円日本銀行券の存在によれば、

原判示の事実を認定することができるのであつて、原判決の認定には所論のような

証拠上の矛盾や撞著はないから論旨は理由がない。

同第三点について。

没収の要件に関する事実は、罪となるべき事実ではないから、判決において証拠

によりこれを認めた理由を説明することを要しない。されば、原審が本件につき存

する証拠から所論の押第二八一八号の(ロ)ノ一〇乃至一九が被告人等において本

件犯行の用に供し又は供せんとしたものと認めて没収の言渡をしたことは違法では

- 1 -

ないから論旨は理由がない。

同第四点について。

原判決中に所論のように発巻局長とあるのは発券局長の誤記であること明白であ

り、また被告人は他の共犯者と共謀して本件犯罪を行つたのであるから、共犯者中

の一人が所論の木製印形を使用して本件銀行券を偽造した以上、被告人に対する関

係においても右印形を没収することは違法ではない。それゆえ論旨は理由がない。

同第五点について。原判決の犯罪事実の部と証拠説明の部とにおいて、所論の偽

造百円日本銀行券の枚数について一枚の差のあることは所論の通りであるが、二四

五二枚中一枚の食い違があるからとて原判決を破毀すべき違法とは認められないか

ら論旨は理由がない。

よつて、旧刑訴法四四六条に従い、主文の通り判決する。

以上は、当小法廷裁判官全員の一致した意見である。

検察官 茂見義勝関与

昭和二五年二月二八日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!