大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)2579 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人舛谷富勝の上告趣意第一について。

しかし原判決挙示の証拠を綜合してみると、相被告人BがCに対し返金を迫つて

暴行を加えている最中、外出先から帰つて来た被告人Dが、その経緯をBから聞い

て憤慨し、共にCから返金させようと決意し、所携の拳銃を差向けてCを脅迫し、

BもDの加勢を承知しつゝ両名相共にCに返金を迫り、遂にCを畏怖せしめて金員

を喝取したという原判決の認定が首肯できる。このような所為は即ち共謀による恐

喝行為であるから、原判決がこれを恐喝罪の共犯としたのは正当である。論旨は要

するに原判決の認定しない事実を基礎として、擬律錯誤又は審理不尽を主張するの

であるから採用することができない。

同第二について。

しかし被告人DがCを恐喝するについて、相被告人Bと意思を通じ、実行を分担

したものであることは、前記の通りであるから、原判決には所論のような違法はな

い。本論旨も亦結局、原判決の事実誤認を主張するか、又は原判決の認定しない事

実を前提として原判決を非難するかに帰し、採用することができない。

同第三について。

しかし所論Aの証言は第一審公判廷においてなされたものであつて、これに対し

ては被告人Dの弁護人舛谷が補充訊問をなし、D自らも弁解している。このように

証言が第一審公判廷において被告人の面前でなされ、被告人はすでにその供述の内

容を知り悉しており、被告人に証人尋問の機会が与えられている場合には、第二審

において同証人の申請(殊に本件においては証人の申請をしたのは被告人ではなく

てBの弁護人である)を却下しておきながら、その供述記載を証拠にとつても所論

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のような違法を来たすものでないこと、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一七

一八号同二四年三月三一日第一小法廷判決)に示されている通りであるから、論旨

は理由がない。

弁護人秋山常吉の上告趣意第一点について。

しかし原判決摘示の犯罪事実は挙示の証拠によつて十分認定できるところであつ

て、その間何等実験法則に背反する違法は存しない。論旨は理由がない。

同上第二点について。

しかし原判決挙示の証拠、なかんずく第一審における昭和二三年五月一四日の公

判調書中証人Cの証言として、「自分が二万円出したのはBに暴行を加えられたば

かりでなく、Dに拳銃をつきつけられたりしたので恐ろしくなつたからである」旨

の記載等によれば、被告人等の暴行脅迫と被害者の金員交付との間に因果関係の存

したことが認定できる。記録を調べてみると、原審裁判所は被害者や関係者の証言

をも十分に参酌して右のような因果関係のあることの心証を得たものであることが

窺われるので、これを以て所論のように審理不尽の違法あるものということはでき

ない。論旨は結局原審の採用しない証拠に立脚して、前記の認定を非難するに外な

らず、その理由がない。

同上第三点について。

しかし原判決挙示の証拠を調べてみると、被告人Bに対する検事の聴取書中に同

人の供述として、同人がCに返金を要求しているときDは同人に加勢して、「この

野郎早く出さないか」と云つていたが、その中に「これでもわからんか」と二三回

どなつて拳銃をとり出したという趣旨の記載がある外、第一審公判調書中にBの供

述としても、又Cの供述としても、同趣旨の記載がある。原判決は、これ等の有力

な証拠を綜合して、被告人D及び同Bが「相共にCに対し返金を迫つた」事実を認

定したのであるから、原判決は、所論のように虚無の証拠に依り又は薄弱な証拠に

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因り事実を認定した違法あるものということはできない。論旨は理由がない。

同上第四点について。

(一)しかしBがCに対して正当な請求権の行使として返金を要求したものであ

るということも、CはBに対して承諾による返金の義務を負いBは取戻の権利を得

たものであるということも、共に原判決の認定しないところである。論旨は原判決

の認定しない事実を前提として、その擬律錯誤を主張するに外ならないから採用す

ることができない。

(二)しかし原判決は、その挙示の証拠により、被告人両名が相互に意思を通じ、

互の気勢を利用しつゝ、暴行脅迫を加えてCに返金を迫り、遂に金員喝取の目的を

遂げた事実を認定したのである。従つて原判決が被告人の所為を恐喝の共同正犯と

してこれに刑法第六〇条を適用したことは正当であつて、所論のように理由不備の

違法はない。論旨は理由がない。

以上の理由により旧刑訴第四四六条に従い主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

検察官 茂見義勝関与

昭和二五年四月二五日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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