大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)651 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人山口貞昌の上告趣意書は末尾に添えた別紙記載の通りである。

(一) 上告論旨第一点は、被告人は強盗実行の手段として故なく他人の住居に

立入つたものであるから、その住居侵入をも問題として刑法第一三〇条第五四条を

適用せねばならぬのに、原審がそれをしていないのは擬律錯誤の違法である、と主

張する。しかし原審判決が引用した第一審判決摘示の事実によれば、被告人は共犯

者とともに「午前一〇時三〇分」その時刻には普通に人の出入りのある古着商の店

内に「客を装つて」はいつたのであり、検察官もこれを強盗傷人罪としてのみ起訴

しているところから、第一審は住居侵入を犯罪事実として認定しなかつたのであつ

て、原審が同じ態度を採つたことも違法とは言い得ない。いわんや住居侵入を問題

にしなかつたことは、断罪の上にも量刑の上にも被告人の不利益とはなり得ないの

であつて、論旨は結局理由がない。

(二) 上告論旨第二点は、原審が「当裁判所の認定した被告人の犯罪事実及其

の証拠は原判決摘示と同一であるから茲に之を引用する。」と判示したことから生

じた食いちがいを問題とする。なるほどこれでは論旨の通り、原審は自ら聴取しな

かつた自白および証言を自ら聴取したものとして証拠に供したことになるのであつ

て、旧刑事訴訟法第四〇五条が第一審判決の引用を許しているにしても、かような

判決理由の書き方は甚だ好もしくない。しかしながら原判決の趣旨が、被告人およ

び証人の供述を直接聴取の自白または証言としてゞなく、第一審公判調書中の供述

記載の書証として採用したものであること、極めて明白であるから、これを以て旧

刑事訴訟法第四一〇条第一九号にいわゆる「判決ニ理由ヲ附セス又ハ理由ニ齟齬ア

ル」ものとまで極言するのは、かえつて他方への行き過ぎであつて、論旨はこの意

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味で採用し得ない。

(三) 上告論旨第三点は、原判決は被告人の第一審公判廷における自白を唯一

の証拠として、他の補強証拠を併用せずに、強盗共謀の事実を認定したものであつ

て、刑訴応急措置法第一〇条第三項に違背すると非難する。もつとも上告論旨もこ

の点に関する当裁判所の判例があることはこれを認め、新刑事訴訟法第三一九条と

の釣合上判例の変更を要望するのであるが、その議論の当否はしばらく措き、原審

が引用した第一審判決の証拠説明を見ると、強盗の共謀から実行に至るまでを一連

の犯罪事実として、被告人の公判廷における自白のほか他の証人の証言、被害届そ

の他の補強証拠により綜合認定しているのであるから、前記の論旨はその前提を欠

いており、論旨は理由がない。

よつて、旧刑事訴訟法第四四六条に従い主文のとおり判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

検察官 長谷川瀏関与

昭和二四年五月一七日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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