最高裁判所第三小法廷 昭和24(れ)700 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
弁護人高畑春二の上告趣意第一点について。
しかし被告人Aの第一審公判廷における供述が所論のように虚偽の自白であると
認めるべき証跡は存しない。従つて原判決がこれを証拠として採用したことは、そ
の自由裁量権に属するところであつて、何等の違法もない。又被告人Aが賭博の前
科四犯あるに拘わらず、最終受刑後僅か五六月にして更らに二回判示の通りの賭博
をなしたことに基いて、その常習性を認定したことも、肯認できることであつて、
少しも経験則に反することではない。被告人の素行や社会的地位や信望が所論の通
りであるとしても、右のような認定を妨げる理由ともならないし、そのような認定
が健全な国民の法感情を無視する所以ともならない。
論旨は、原判決が原審相被告人Bに対しては単純賭博罪として罰金刑を科したに
止まるにも拘わらず、被告人Aに対して実刑を科したのは、憲法第一四条及び第三
七条に違反するものであると主張するけれども、当裁判所の判例に示されている通
り、犯情の類似した犯人間の処罰に差異があるからとて、憲法第一四条に違反する
ものでなく(昭和二三年(れ)四三五号、同年一〇月六日言渡大法廷判決)、又憲
法第三七条第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは偏頗や不公平のおそれの
ない組織と構成をもつた裁判所による裁判という意味であつて、個々の事件におい
て偶々被告人に不利益な裁判がなされても、それが一々右の条項に触れるものでは
ない(昭和二二年(れ)第一七一号、同二三年五月五日言渡大法廷判決)から、論
旨は採用することができない。
同第二点について。
論旨第一点について示したと同じ理由によつて、本論旨も亦採用することができ
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ない。
同第三点について。
原審公判調書には、裁判長が所論の嘆願書三通その他の書類を陪席判事と共に閲
覧し、これを「本件に編綴する旨を告げ」たと記載されているにも拘らず、右の嘆
願書が記録に編綴されていないこと、所論の通りである。しかし公判調書には裁判
長が右の旨を告げたという事実が記載されているのであつて、嘆願書を編綴したと
いう事実が記載されているのではないから、これを以て公判調書の記載が虚偽であ
るということはできない。唯裁判長の右の言葉は実行されていないけれども、これ
を以て違法ということはできない。蓋し右の嘆願書は元来証拠書類でなくて参考書
類に過ぎないものであるのみならず、仮りにこれを証拠書類としても、右の記載に
よつて証拠調の終了したことが認められる。さすればこれを記録に編綴しないから
とて、所論のように判決に影響を及ぼすことでもなく、弁護人の正当な弁護権を不
当に蹂躙することにもならないからである。それが公平な裁判所の裁判を保障する
憲法の条規に触れるものでないことは、論旨第一点について述べたところによつて
明かであろう。よつて論旨は凡て理由がない。
以上の理由により旧刑事訴訟法第四四六条、最高裁判所裁判事務処理規則第九条
第四項に従い主文の通り判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
検察官 長谷川瀏関与
昭和二四年五月一七日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
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裁判官 河 村 又 介
裁判官 穂 積 重 遠
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