大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和24(オ)65 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人吉野数衛の上告理由第一点について。

被上告人から上告人に対する所論(一)の貸金債権については当事者間において、

上告人が弁濟期にその支払をしなかつた場合には被上告人は何時でも本件宅地、建

物の所有権移轉登記をすることができるという約束があつて、そのために右宅地、

建物に関する権利証、印鑑証明書、委任状等を上告人から被上告人に交付したとい

う主張事実(被上告人は右の貸金債権については上告人との間に本件宅地建物に抵

当権を設定する約束があつたといつているだけである)は、右の貸金債権が存在し

たかどうかに関しては單に附随的な事実であつて、獨立の争点を為す事実とはいえ

ないのみならず、訴訟物たる権利関係に直接関係なき間接の事実であるから判決に

その摘示をすることは必ずしも必要ではない。また証拠の採否は、それが実験則に

反する等のことのない限り裁判所の自由心証に任せられており、その採否について

その理由を一々説明することを必要とするものではない。而して所論乙第一号証の

一乃至三によつては本件建物が元登記簿上一個の建物となつて居るが昭和一八年二

月二七日に至りこれを二分してその一について保存登記、他の一について従来の登

記の変更登記が為されたものと疑い得られないこともなく従つてこれにより右(一)

の貸金債権成立の当時である昭和一五年七月頃に本件宅地、建物の権利証が存在し

なかつたと認めなければならないものでないから、原審がこの証拠を採用せず、証

人Dの原審における証言等によつて右の債権が存在する事実を認めるからといつて

これを実験則に反する違法の認定ということはできない。

従つて原判決には所論のような違法はない。

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同上第二点について。

証人が当事者の妻その他親族関係のある者だからといつてそれらの証言を信用す

ることができないという実験則は存在しない。而して被上告人の兄に当るDの原審

における証言が乙第一号証の一乃至三と必ずしも矛盾しないことは上告理由第一点

に説明したとおりであるから、右乙号各証が存在することを理由として右証言が偽

証であると認めなければならないことはないその他被上告人の親族である所論証人

の証言が暖昧であつて事実に反するということは各証言調書を調べても認められず、

また乙第一号証の一乃至三が上告人の手中にあるという事実も必ずしも右の各証言

と矛盾するとはいえないから、原審がこれらの証言を採用したのは何等実験則に反

するものでなく、論旨は採用することができない。

以上の理由により民事訴訟法第四〇一条第八九条第九五条に従い主文の通り判決

する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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