大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和24(ク)32 決定

主 文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理 由

抗告理由は多岐にわたつて居るけれども、本件は最高裁判所に対する特別抗告で

あるから、憲法違反の主張以外は適法の抗告理由とならない。よつて抗告理由中憲

法違反の主張について左に判断する。

(一)憲法第二五条は、国家が国民一般に対して概括的に健康で文化的な最低限

度の生活を営ましめる責務を負担し、これを国政上の任務とすべき旨を規定したに

止まり、直接個々の国民に対して具体的現実的にかかる権利を賦与したものでない

こと当裁判所大法廷の判例とする処である。従つて原審が抗告人の抗告を却下した

ことが憲法第二五条に違反するものでないこという迄もなく、同条違反を主張する

論旨は理由がない。(二)憲法は国民に裁判所の裁判を受ける権利を保障して居る

けれども、これは抗告人のいう様に裁判を遂行する必要の為め職業を失わしめない

こと迄保障するものでないこと勿論である。従つて論旨は憲法論としても理由のな

いこという迄もない処だが、これは憲法の解釈論として小法廷において此理由で裁

判をするのは少しく妥当でないかもしれない。しかし抗告人は論旨でもいつて居る

様に訴訟上の救助を受けて現に本訴を遂行して居るのであるから、原決定の為め本

訴を遂行することが出来なくなるとの主張は前提を欠くもので理由がない。(三)

消極的に本件仮処分をしないことで職業選択の自由が侵害されるということは考え

られない。抗告人は如何なる職業でも(Bの従業員という職業でも何でも)選択す

ることは全く自由である。只相手方が抗告人を使用しなければ事実上その職に就け

ないというだけで、抗告人がこれを選ぶ自由は少しも害されない。相手方が使用す

ることを承諾するか、或は抗告人が本訴で勝訴すれば事実上その職に就くことも出

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来るのである。抗告人申請の仮処分が為されないことは職業選択の自由とは全然関

係がない。或人が就職を希望すれば相手方は必ずこれを受諾しなければならないと

か、使用人は如何なる事由があつても被使用人を解雇してはならないとかいう規定

は憲法の何処にもない。原決定によつて職業選択の自由を害されるとの論旨の如き

は全くこじつけで、徒に憲法違反に籍口して理由なく原決定を非難するに過ぎず、

採用の限りでない。その他の論旨は適法な特別抗告理由とならない。

よつて、抗告を理由なしとし、抗告費用は抗告人に負担させることとし、主文の

如く決定する。

昭和二六年八月二八日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

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