最高裁判所第三小法廷 昭和25(あ)2878 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人神道寛次の上告趣意第一点について。
原判決の認定した事実によれば、被告人は正規陸軍将校であつたことにより覚書
該当者として指定されたものであるに拘らず、昭和二三年九月二八日頃日本共産党
へ入党の届出をして翌二四年六月頃入党を拒絶されるまでの間、原判示(一)乃至
(四)のように日本共産党a地区委員会の委員長でA同盟の責任者であるB等と共
同して観音寺税務署その他において右同盟が納税に関し税務署員に対し要求又は反
対するのを支持したり演説したりしたというのであるから、被告人の右税金斗争の
行為が論旨引用にかゝる当裁判所の判例にいう「現実の政治に影響を与えるものと
認められるような行動」であることは多言を要しないところである。それゆえ被告
人が右行為により政治上の活動をしたものと判断した原判決は当裁判所の判例に反
するものではない。なお、所論中には憲法の規定を援用しているところがあるが、
論旨の実質は、被告人の行為が昭和二二年勅令第一号に規定する政治上の活動に当
るかどうかの同勅令の解釈問題であつて憲法上の問題ではない。
同第二点について。
所論は、刑訴四〇五条に定める事由に当らないばかりでなく、原判決挙示の証拠
殊に証人Cの尋問調書によれば被告人が原判示(五)のような募金活動をしたこと
が肯認されるのであつて、その他記録を精査しても本件が刑訴四一一条を適用すべ
き場合に当るものとは認められない。
同第三点について。
刑法三六条に規定する正当防衛は、急迫不正の侵害に対し権利を防衛するため己
むことを得ないで行動した場合に成立するものであることは言うまでもない。原判
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決は、被告人の行為がこれらの各要件を欠くものとして被告人の正当防衛の主張を
排斥しているのであつてもとより正当である。論旨は、正当防衛の要件の一たる権
利の侵害なしとした原審の判断を違憲であると主張するのであるが、原審は被告人
の行為が正当防衛の他の要件をも欠くものと認めてその主張を排斥しているのであ
るから違憲の主張につき判断するまでもなく論旨は理由がない。
よつて、刑訴四〇八条に従い主文のとおり判決する。
以上は裁判官全員一致の意見である。
昭和二五年一二月一二日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 穂 積 重 遠
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