大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和25(あ)288 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人向江璋悦同宮崎梧一の上告趣意第一点について。

論旨は、「つくろい」の慣習が適法なものであることを前提として、かゝる慣習

に従うと否とは自由権の内容をなすものであつて基本的人権に属するのであるから、

原判決がこの「つくろい」を物交取引と看做して弾圧したのは憲法一一条に違反す

ると主張するのである。しかし、原判決は、いわゆる馬の「つくろい」料を米で支

払うということが長年の慣習であつたとしても、物価統制令その他給付の対価とし

て金銭以外の物を支払い又は受領することを禁止する法令が施行された以後は、右

は違法な慣習となつたものであるから、これをもつて物価統制令第一三条にいわゆ

る「正当の事由」とはなし得ないものであるとして被告人の本件行為を物価統制令

第三五条第一三条等に違反したものと判断したのである。要するに、論旨は馬の「

つくろい」料を米で支払うという慣習が適法のものであることを前提として違憲論

を展開しているのであるが、原審は右の慣習を違法であると判断しているのであつ

て、その判断は正当である。従つて、論旨の違憲論は前提を欠くものであるから問

題となる余地がない。それゆえ、論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨に引用する当裁判所の判例の趣旨とするところは、「農を業とする者が、正

当な事由がないのに玄米二俵と猟銃一挺とを交換する行為は、取引の目的物を金銭

に評価してなされたものでなくても、物価統制令一三条に違反する」ということに

あるのであつて、所論のような点にあるのではない。それゆえ、原審は当裁判所の

判例と相反する判断をしたものではないから論旨は理由がない。なお、本件につい

ては、刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。

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よつて、刑訴四〇八条に従い主文のとおり判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

昭和二五年一一月七日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 土 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

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