最高裁判所第三小法廷 昭和25(れ)1381 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人森武喜上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。
第一点について。
所論は、原審の訴訟手続が刑訴一五七条乃至一五九条に違反することを主張する
ものであるが、本件はいわゆる旧法事件であつて刑訴施行法二条により、新刑訴法
の適用はなく、旧刑訴法および刑訴応急措置法が適用されるのであるから、新刑訴
法の適用を前提とする所論は採用できない。そうして記録を調べると、原審第一回
公判期日において、裁判長は証人Aその他の証人につき訊問の日時場所を指定して
決定を宣告し、第二回公判期日において所論証人Aの訊問調書をふくむ各証人訊問
調書につき適法な証拠調が行われ、これに関して被告人側から何等の異議も請求も
のべられていないのであるから、原審が証人Aの訊問調書を証拠として事実認定の
資料としたことには、すこしも違法はない。論旨は理由がない。
第二点について。
所論電話聴取書に契印のないことは所論のとおりであるが、その筆跡、墨色、内
容によつて充分文書の連続を認めうるのであるから契印を欠くという一事によつて、
ただちに証拠能力を否定することはできない。そうして原審第一回公判期日におい
て、右電話聴取書については適法な証拠調が行われ、被告人側から供述者の訊問請
求もされなかつたのであるから、原審が右電話聴取書を証拠としたことには、何等
の違法はない。なお、前記のように、本件については新刑訴法の適用はないのであ
るから、刑訴三二一条以下の規定違反を主張する所論は採用できない。
第三点について。
原審は、被告人がB外一名を匕首で刺したのは、ののしられ、殴打されたので、
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激昂の余りそうしたのであると認定しているのであり、単なる防衛のための行為で
あつたとは認定していない。そうして原審の認定は、挙示の証拠によつてこれを肯
認することができる。所論は畢竟事実誤認の主張にほかならないから、適法な上告
の理由にならない。
第四点について。
所論は、量刑不当の主張であるから、適法な上告の理由にならない。
よつて旧刑訴四四六条により主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見である。
検察官 小幡勇三関与
昭和二六年二月二〇日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
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