大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和25(れ)1425 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人上辻敏夫同山田鷹夫の上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。

上告趣意第一点乃至第三点について。

原判決の確定した事実によれば、被告人は本件自動車の前方に荷車が置いてある

ことをその荷車から一米ほどの距離に近ずいて始めて気が付いたというのである。

原判決が説示しているように、自動車を操縦する者は常に前方を注視して交通事故

を未然に防止する義務があるに拘わらず、本件自動車の進行上障害となるべき荷車

が道路上に置いてあることを僅か一米程の距離に接近するまで気が付かなかつたこ

とは原判決が認定したような事情のもとにおいては正しく前方注視義務を怠つたも

のといわざるを得ない。論旨は被告人が本件事故を起したのは原判決が説示してい

るような、畑で麦刈をして居た娘をちらと見てそれに気をとられた為めではないと

主張する。しかし、娘をちらと見た為めであると其の他の理由によるとを問わず、

障害物があることを一米程の距離に達して始めて気が付いたということは、前方注

視義務を怠つたものといわなければならないし、原判決は本件事故を起した原因は、

ハンドルを右に切り返して進路を是正するか又は急停車の措置を講じなかつた為め

であると判示しているのであるから、所論娘をちらと見たことに関する原判決の説

示が仮りに所論の如きものであるとしても、被告人は前方注視義務を怠つたこと及

び前叙の如くハンドルを右に切り返して進路を是正するか又は急停車の措置を講じ

なかつた過失があることは明らかであり。原判決には所論のような違法はない。な

お論旨は被告人が本件事故を起したのは熱射病にかかつて目がくらんだ為めである

と主張するが、さようなことは原審の認定せざる事実である。要するに論旨は原審

の採用せざる証拠や、認定せざる事実を引き来つて独自の見解を立て原判決の違法

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を主張するものであるから採用に値しない。

よつて旧刑訴四四六条により主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

検察官 長部謹吾関与

昭和二六年二月二〇日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

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