大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和25(れ)685 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人静永世策同一木正光連名および一木弁護人単独の各上告趣意は末尾に添え

た別紙記載の通りである。

(一) 静永一木両弁護人の論旨は、原審が被告人の精神鑑定に関する三つの資

料中その一を採用して他の二を排斥したこと、および被告人に対する検察官の聴取

書を証拠としたことを非難するのであるが、証拠の取捨は事実審の裁量に属し、そ

して原審の判断が経験則に反するものとは認められないから、所論は結局事実認定

に対する非難に帰し、上告の適法な理由にならない。

(二) 一木弁護人の論旨第一点は、原審は被告人の心神耗弱を認定しながらそ

の程度について証拠調をしていない、と非難する。しかし右被告人の心神耗弱状態

は鑑定人Aの鑑定書および同鑑定人の供述により認定され得るところであつて、原

審に審理不尽なく、論旨は理由がない。

(三) 同論旨第二点は、前記鑑定人の鑑定書と供述とは矛盾している、と主張

する。しかし右鑑定書と供述とは必ずしも矛盾せず、なお原審は他の証拠をも参酌

して被告人の心神状態は喪失程度でなくて耗弱程度であると認定したのであつて、

審理不尽とは言いがたく、論旨は理由がない。

(四) 同論旨第三点は、本件強盗殺人同未遂の起訴に対し原審が単に殺人同未

遂を認定し、強盗について審理判断しなかつた、と非難する。しかし、犯罪の基本

的事実が同一であるならば、旧刑訴法適用の事件においては、強盗殺人同未遂の公

訴事実の審理に当つて強盗の犯意の証明が十分でないと認めたときは、判決におい

てこれを殺人同未遂と認定することを妨げないのである。このような一罪の一部分

については所論のごとき公訴の取消ということもあり得ないし、又既判力はその全

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部に及ぶのであるから、何ら被告人に不利益な裁判であるということはできず、却

つて法定刑から見ても被告人に有利な裁判であつたといえるところであつて、論旨

は理由がない。

よつて、旧刑訴法第四四六条に従い、主文の通り判決する。

以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。

検察官 岡本梅次郎関与

昭和二五年九月二六日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 穂 積 重 遠

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