大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和25(れ)888 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人田中福一の上告趣意一について。

原判決中に「同法第一九条第一項第一号第二項により」とある同法とは、文章の

前後の関係から見れば食糧管理法をさすもののように読めることは所論のとおりで

ある。しかし、原判決は右規定を適用する理由として「押収に係る玄米は判示犯罪

行為を組成したもので被告人以外の者に属しないから」ということを述べて右規定

により玄米の換価金を没収しているのである。そして、食糧管理法第一九条は右引

用した理由とは全く無関係な規定であるとともに、押収物が犯罪行為を組成したも

のであつて被告人以外の者に属しないという理由でそれを没収し得るような規定は、

刑法第一九条第一項第一号第二項であることも裁判上周知の事実である。してみれ

ば、原判決に同法とあるのは、刑法の誤記であると認められる。原審が法令の適用

に関してこのような誤記を看過したことは粗漏のそしりを脱かれないこともちろん

であるが、それが誤記と認められる以上、原判決を破毀しなければならない違法で

はないから論旨は理由がない。

同二について。

憲法第三七条第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のお

それのない組織と構成をもつた裁判所による裁判を意味するものであつて、個々の

事件につきその内容実質が具体的に公正妥当なる裁判を指すのではないことについ

ては当裁判所の判例の示すところである(昭和二二年(れ)第四八号昭和二三年五

月二六日大法廷判決、昭和二三年(れ)第五九号同年六月二日大法廷判決)。それ

ゆえ、原審が被告人に言渡した刑が他の同種内容の事件の刑と比較して甚だしく重

くその権衡を失したとしても、それをもつて憲法の前記規定に違反するものではな

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いことは、前記判例の趣旨から明らかなので論旨は理由がない。

同三について。

被告人の自白と補強証拠と相俟つて全体として犯罪構成要件たる事実を認定し得

られる場合においては、必ずしも被告人の自白の各部分について一々補強証拠を要

するものでないことについても当裁判所の判例の示すところである(昭和二三年(

れ)第七七号昭和二四年五月一八日大法廷判決)。されば、所論現行犯人逮捕手続

書中の記載が被告人の自白の全部にわたつてこれを補強するに足るものでないとし

ても所論のような違法はない。

同四について。

所論現行犯人逮捕手続書中の記載は、被告人の自白と相俟つて優に原判示事実を

推認させるに足るものであるから、いわゆる補強証拠となり得るものであることも

ちろんである。それゆえ、原審は被告人の自白のみによつて被告人を有罪と認定し

たものではないのでかかる事実の存在を前提とする憲法違反の論旨は、その前提を

欠くの結果問題とならない。

よつて、本件上告を理由ないものと認め、旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判

決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

検察官 岡本梅次郎関与

昭和二五年一〇月二四日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

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