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最高裁判所第三小法廷 昭和26(あ)1335 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

被告人Aの弁護人高井千尋の上告趣意(後記)第一点について。

論旨は、要するに、B改良事務所とC木材株式会社(以下Cと略称する)との間

には、原判示の如き請負契約がないのであるから、事務所長たる被告人AとCの社

長たるD及び同社員Eとの間には、請負人に対する指導、監督、便宜供与の問題は

成立する余地はないとし、原判決の法令違背を主張するものであつて、刑訴四〇五

条の上告理由に当らない。

しかも第一審判決及びこれを維持する、原判決を検討するに、本件a橋の改良並

びに災害復旧工事は、富山県の直営工事ではあつたが、Cは、富山県がその工事用

材として岐阜営林署より払い下げを受けた同署管内山林の立木の伐採、搬出の作業

を合法的に請負い、その工事材料の納入検査等を通じ、前記改良事務所長の指導監

督下にあつたことは、挙示の証拠により明認できるのであるから、論旨はその前提

を欠き採用することはできない。

同第二点について。

論旨は結局本件虚偽公文書行使の事実と詐欺の犯意とを否認する事実誤認の主張

に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

しかも第一審判決をその摘示する事実と挙示する証拠とを対照しつつ詳細に検討

するに、原判示の如く、被告人Aは、相被告人Fと共謀の上、いわゆる幽霊人夫の

方法により、架空の工事について、所員をして虚偽の公文書を作成して県に提出行

使せしめ、富山県出納局係員を欺罔して、判示の如き金員を、人夫賃支払名下に騙

取した事実を認めることができる。論旨は、原審と異つた見地に立脚して、いわれ

なく事実の誤認を主張し、独自の法律論をなすもので、到底採用することはできな

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い。

被告人Aの弁護人島田武夫、同高井千尋、同島田徳郎の上告趣意(後記)第一点

について。

論旨は、Cの前記請負作業については、被告人Aにおいてこれを指導監督する権

限がなかつたことを前提とする違憲の主張であるが、前記高井弁護人の論旨第一点

について説示したように、第一審判決の挙げた諸証拠特に所論施行規定に徴し、C

が前記直営工事の用材を伐採搬出する請負作業につき前記改良事務所長の指導監督

下にあつたことは明瞭であるから論旨は前提を欠くものである。

同第二点乃至第四点について。

論旨はすべて事実誤認を前提とする主張であるが、第一審判決の挙げた諸証拠に

照し、判示犯罪事実を認めることができるのであるから、採用することはできない。

同第五点について。

第一審判決の挙げた証拠を詳細に検討すると判示の犯罪事実は、これらの諸証拠

により優に認定することができる。しかもこの点に関する原判決の判示するところ

はすべて納得できるものであつて、判示の如き被告人の所為が詐欺罪を構成するこ

とは明瞭である。所論引用の判例は、本件の場合に適切なものではない。従つて論

旨は理由がない。

同第六点について。

第一審判決の摘示するところによると、被告人はB改良事務所の所長として所管

直営工事の施行、工事材料の納入検査等の事務を掌理する地位にありながら、架空

の工事について、いわゆる幽霊人夫の方法により、内容虚偽の人夫賃請求書を県に

提出し、出納局係官を欺罔して、人夫賃支払名下に多額の金員を騙取したというの

であるから、被告人の企図、金員授受の形式の如何を問わず、詐欺罪を構成するこ

とは当然である。論旨はそれゆえ採用することはできない。

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被告人Fの弁護人大竹武七郎の上告趣意(後記)第一点について。

論旨はすべて、事実誤認若しくは単なる法令違反の主張で、刑訴四〇五条の上告

理由に当らないのみならず、記録に基き第一審判決並びにこれを維持する原判決を

検討しても、所論の点につき事案誤認若しくは法令違反のかどを発見することはで

きない。

同第二点について。

論旨はすべて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。しかも第一審判決が証拠とし

て挙げる所論被告人Fの検事に対する第二回供述調書は、原判示の如く第四回供述

調書の誤記であること記録上明瞭であり、所論Gの証言が経験則上証拠力がないと

は断言し得ないから論旨(一)は理由がない。また前記被告人Aの弁護人高井千尋

の論旨第二点及び同被告人の弁護人島田武夫、高井千尋、島田徳郎の論旨第五点に

ついて説示した如く、第一審判決の挙げた証拠により、判示詐欺の事実を認定する

ことができるのであつて、この点に関し原判決の判示するところはすべて首肯する

に足りるものである。従つて論旨(二)も採用することはできないばかりでなく、

論旨(三)の点についても、まだ原判決を破棄するに足る事実誤認、量刑不当若し

くは法令違反があるものとは認められない。

被告人Dの弁護人鍛治利一、同高見之忠の上告趣意(後記)第一点乃至第三点に

ついて。

論旨は、本件a橋の改良並びに災害復旧工事は、富山県の直営工事であつて、a

橋改良事務所長がCとの間に請負契約を締結し得る法令上の根拠がなく、従つてま

た、所長にはCの作業を監督する職務権限がないと前提し、右所長にかかる権限あ

りと解する原判決の法令違反を主張し、ひいて本件贈賄罪の成立を否定するもので

刑訴四〇五条の上告理由に当らない。しかも被告人Aの弁護人高井千尋の論旨第一

点並びに同被告人の弁護人島田武夫、高井千尋、島田徳郎の論旨第一点について説

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示した如く、Cは、ともかくも前記工事に関し、その工事用材として富山県の購入

した立木の伐採、搬出を請負い、その工事用材の納入検査等を通じ所論施行規定に

従い、直営工事施行の現場担任者たる前記改良事務所長の指導監督下において作業

に服していたこと証拠上明かであるから、所論を採用して原判決を破棄すべきもの

と認めることはできない。

同第四点及び第五点について。

論旨はすべて事実誤認若しくは単なる法令違反の主張で刑訴四〇五条の上告理由

に当らないのみならず、記録に基き、第一審判決並びにこれを維持する原判決を詳

細に検討しても、未だ原判決を破棄するに足る事由を認めることはできない。

同第六点及び弁護人高見之忠の上告趣意(後記)第一点について。

所論の、被告人Dに対する第一審判決の挙げる適条が原判示の如く全くの誤記で

あることは、同判決の判文の趣旨により明白であるから、論旨は採用することはで

きない。

被告人Fの弁護人古屋東の上告趣意(後記)第一点について。

論旨は、被告人等の本件人夫賃請求は、本件工事に関する県予算総額の範囲内に

おいて、工事施行上必要な経費の支出を求めたもので正権限に基く権利行使であり、

詐欺罪を構成すべき限りでないと前提して、原判決の判例違反を主張するものであ

るが、被告人Aの弁護人高井千尋の論旨第二点並びに同被告人の弁護人島田武夫、

高井千尋、島田徳郎の論旨第五点について説示した如く、第一審判決の挙げた諸証

拠に照し、被告人等がいわゆる幽霊人夫の方法により、架空の工事について、所員

をして虚偽の公文書を作成行使せしめて富山県出納局係員を欺罔し、判示の如き金

員を人夫賃支払名下に騙取した事実を認めることができる。この点に関し、原判決

が被告人等に詐欺の罪責を負わしめるに足るものとして判示するところは、すべて

納得できるところであつて、これら架空の工事についての人夫賃の請求までが所論

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の如く、被告人等の正権限に基く権利行使であるとは到底解することはできない。

論旨は前提を欠くのみならず、所論引用の判例は本件に適切なものでない。論旨は

理由がない。

同第二点、第三点及び第五点について。

論旨は結局事実誤認若しくは単なる法令違反の主張で、刑訴四〇五条の上告理由

に当らないばかりでなく、記録に基き、第一審判決及びこれを維持する原判決を検

討しても、未だこれを破棄するに足る事由は認められない。

同第四点について。

論旨は結局被告人等の収受した金員は単なる社交的儀礼の範囲を出でないもので

あると前提して、判例違反を主張するものであるが、第一審判決の挙げた諸証拠に

より右金員の授受が原判示の如く、社交的儀礼の範囲を越えたものであることは明

瞭である。従つて論旨は前提を欠くのみならず、所論引用の判例は本件に適切なも

のではない。

被告人Dの弁護人高見之忠の上告趣意(後記)第二点について。

被告人Fの弁護人古屋東の論旨第四点について説示した如く、被告人等の本件金

員の授受が社交的儀礼の範囲を越えたものであることは明瞭であり、第一審判決は

証拠に基き、明かに、かかる趣旨の下に、被告人等を有罪としたものであり、原判

決もまたかかる第一審の判断を正当として、弁護人の主張を排斥したものであるか

ら論旨は採用するを得ない。

同第三点について。

論旨は量刑不当の主張で刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

昭和二八年三月一〇日

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最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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