大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和26(あ)2193 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人田中栄蔵の上告趣意第一点について、

所論は殺意の点を争う事実誤認の主張であつて適法な上告理由とならない。

同第二点について、

憲法三七条二項の規定は裁判所がその必要を認めて尋問を許容した証人に限られ

る法意であることは既に当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第

八八号同二三年六月二三日大法廷判決参照)。そして、記録によれば所論の証人A

については、原審第二回公判廷で裁判所が職権により証人喚問の決定をしたのであ

るが、同人はその喚問期日に出頭せず、次いで、第四回公判期日に再度の召喚を受

けながら出頭しなかつた為、同人に対し勾引状を発布したところ、所在不明に付き

執行不能となつた。更らに、同第五回、第六回公判期日にも出頭しなかつたので、

再度勾引状を発布したところ、これ亦同人の所在不明の為、執行不能となつたので

第七回公判において、同人の不出頭を俟ち、その決定を取消したものであることが

わかる。されば、かゝる場合裁判所はさきに自らした決定を施行することができな

くなつたのであるから、その決定を取消すことは素より当然のことであつて、原審

の訴訟手続には所論の違法はない。論旨の理由のないことは明らかである。

同第三点について、

所論は量刑不当の主張であつて、適法な上告理由とならない。

被告人の上告趣意について、

所論の中、憲法三七条二項違反を主張する点については、弁護人田中栄蔵の上告

論旨第二点について判断したとおりであつて、その理由のないこと明らかである。

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その余の論旨は刑訴四一一条所定の事由のあることを主張するもので、適法な上告

理由とならない。

なお、本件記録並びに第一審挙示の各証拠によれば被告人に対する判示犯罪事実

は充分認定できるのであり、本件被害者の側において民事上の債務履行につき誠意

を欠くものがあつても、その故を以て所論のように被告人の罪責が免れるものでな

いことは当然である。

その他論旨を仔細に検討し記録を精査しても同四一一条を適用すべき事由は認め

られない。

よつて、同四〇八条、一八一条に従い全裁判官一致の意見で主文のとおり判決す

る。

昭和二八年二月一〇日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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