大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和26(あ)3597 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

被告人A、同Bの弁護人牧野良三、同加藤大謳、同新家猛、同坂野滋の上告趣意

は、末尾に添えた書面記載のとおりである。

上告趣意第一点について。

論旨は、被告人BがCに本件綿糸を売渡した行為に対しては昭和二二年一月二四

日の旧規則の適用があり、同規則によれば被告人Bの行為は適法であつたに拘らず

原判決及び第一審判決はその後公布された昭和二三年六月一五日の現行規則を適用

して処断したのであるから憲法三九条に違反するというのである。しかし、原判決

の是認した第一審判決は、被告人BがCに本件綿糸を売渡した行為は所論の右規則

に違反しただけの行為ではなく、その同一行為が他面において物価統制令違反罪及

び横領罪をも構成し、いわゆる刑法五四条一項前段の「一個ノ行為ニシテ数個ノ罪

名ニ触レ」たものとしてその最も重い物価統制令違反罪の刑により処断したもので

あること第一審判決挙示の法律の適用から見て明らかである。それゆえ、被告人B

の所論行為は一個の犯罪を構成する行為であり適法行為ではないのであるから、右

行為の適法であることを前提とする違憲の主張は採用することができない。

同第二点について。

論旨は、控訴趣意において主張なく、従つて原判決の判断を経ていない事項であ

るから適法な上告理由とならないばかりでなく、被告人等がD工業協同組合から製

織を依頼されて受取つた綿糸を他に流用したためその穴埋めとしてE株式会社から

受取つていた綿糸をもつて右協同組合より製織を委託された縞三綾に製織して同組

合に納入したことは、委託を受け受領した物を委託の趣旨に反して処分したもので

あるから横領罪を構成することはいうまでもない。それゆえ、右行為を横領罪と認

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めた第一審判決を是認した原審に違法はない。されば、横領罪の成立しないことを

前提とする違憲の論旨は採用することができない。

同第三点について。

本論旨も控訴趣意として主張なく、従つて原判決の判断を経ていない事項である

から適法な上告理由とならないばかりでなく、論旨摘録のような第一審判決記載の

事実があつたからとて必ずしも横領罪の成立を否定しなければならないものではな

い。それゆえ、横領罪を認めた第一審判決を是認した原判決に違法はない。されば

横領罪の成立しないことを前提とする論旨は採用できない。

よつて、刑訴四〇八条に従い裁判官全員の一致した意見で主文のとおり判決する。

昭和二八年九月一五日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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